2017.10/15 神戸製鋼の問題(1)
神戸製鋼の問題は、原材料と成形体、そして製品という流れにおいて、原材料の品質管理を原材料メーカーがどのように行い、何を品質保証したらよいのか、という問題を提起している。
まず、データの改竄は絶対にあってはならない、という前提で、データの改竄行っていた人たちの気持ちは、当方も材料開発を行ってきたので「なんとなく理解できる」。しかし「許されることではない」。
高純度SiCの発明に成功したときにその価値についてゴム会社の研究所でもめた。純度の高いことがユーザーにとってどのような価値があるのか分からないので事業にならない、というのがゴム会社の研究所の見解だった。
それに対して、無機材質研究所田中広吉所長は、世界一の純度を一発のプロセスでつくることは世界で初めてのことで、高純度であることととコストが下がる可能性があることで十分に事業になる、と役員の方に所長室で説明してくださった。
その結果、ゴム会社の研究所の見解にもかかわらず、2億4000万円の社長決裁が下りた。実際に今日までゴム会社で事業として継続されているのだが、原材料の外販は行っていない。あくまでも成形体事業として事業を組み立てた。
これは材料事業では、技術進歩とともにコストダウンの戦いに晒され、やがて利益が出なくなり、事業継続が難しくなるからだ。先行投資を受けた後、研究所管理職からは成形体の特徴を出すように求められた。
すなわち高純度SiCを使えばユーザーは他の粉体を用いたときよりも機械特性がずば抜けてよくなるというデータを求められた。その結果、住友金属工業とのJVをスタートできるまで死の谷を6年歩くことになった。
高純度粉体を販売するに当たり、不特定多数のお客さんにその機械特性を保証して販売することなど不可能である。それは成形技術により機械特性が変動するからだ。成形技術はお客様が保有している技術力に依存する(続く)。
カテゴリー : 一般
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