2017.10/22 自動化で神戸製鋼の問題を防げるのか
神戸製鋼は今回の問題についてデータ記録の自動化が一部の工場で進んでいなかった点を指摘し、データ記録の自動化を全工場で進める、と発表した。
神戸製鋼は今回の問題についてその本質に気がついていないようだ。そもそもデータの改竄が行われた背景は、現場の担当者が規格値から少々はずれたデータについて「科学的に」判断しOKを出していたのではないかと想像している。
ゆえに、顧客であるトヨタや日産から神戸製鋼の製品を使用した部品で問題発生していない、すなわち顧客が神戸製鋼の材料を成形して評価したときに規格値に入っていた、とはやばやと声明を出した可能性が高い。
神戸製鋼の一番の問題は、その品質評価体制あるいは仕組みにあるのではないか。理由はデータの「改竄が必要のない」仕組みであれば問題は起きないからである。
中間転写ベルトの開発を前任者から引き継いだときに外部から購入したコンパウンドを内部評価したデータを全部調べた。改竄されたデータが一つも無かったのですぐにコンパウンドに問題があると判断できた。
そこで、カーボンの添加量も間違っていたかもしれないコンパウンドをどうして受け入れたのか前任者に問い合わせて、不良在庫の存在を知ることになった。コンパウンドの納入仕様はザル規格だったので内部で品質評価したときのデータを改竄する必要はなく、測定値がそのまま残されていた。
そのかわり不良在庫をため込むという問題が発生し、少量の間は報告されていたが、棚卸しで計上し忘れたことをきっかけに報告しないようになったという。この不良在庫のおかげで難燃剤無添加で廃材をリサイクルした難燃性樹脂を開発できたので今では良い思い出だ。
神戸製鋼はデータの自動化で新たに発生するかもしれない忖度を警戒しなければならない。仕組みなり体制を見直さない限り、新たな不正が発生する可能性がある。
不良在庫の棚卸しが正しく行われなかったのは、組織に対する忖度だった可能性がある。当方は前任者に忖度し、不良在庫の全てを有価物として中国ローカルメーカーへ販売し、そこでそれを用いて新たな環境対応樹脂を開発(注)した。
今晩は忖度の問題が選挙にどのように影響が出るのか楽しみである。忖度は、その行為自体に善悪は無く、その結果が善悪に影響を及ぼす。忖度のコツは結果が必ず善となるときにだけ行うことである。
(注)新品のPPSを使用していたらコンパウンドの価格は高くなっていた。このテーマがさらに退職後も展開され、引き継いだ部下は社長賞を受賞している。不良在庫は開発資源として経理処理され、忖度で皆幸福になった。
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