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2017.11/03 (フィラーを用いた高分子の機能化)科学の世界における誤解(9)

導電性フィラーを用いたときの機能性高分子材料設計における勘違いについて昨日まで書いてきたが、これが熱伝導性樹脂でも同様の状況で、ただ導電性フィラーと異なるのはバインダー側の開発をしようという動きが出てきたことである。

 

電子と熱では、それぞれを伝達するキャリアが異なる。電子も熱を運べるが、熱電導は主にフォノンすなわち振動で伝わる。ゆえに電子のように導伝体どおしに隙間があると熱はその隙間の伝導性に影響を受ける。

 

まずこれを正しく理解していない人が多い。すなわち、絶縁体でも熱の良導体が存在し、導電体では、電子とフォノンで熱を伝導できる。ゆえにCNTで熱伝導樹脂を設計しようという目論見も生まれてくる。

 

この熱の良伝導体の隙間の影響がどのような影響として現れるのか、具体的な事例で説明すると、熱を伝えにくい高分子に熱伝導フィラーを添加して製造した複合材料の熱伝導率についても導電体と同様にパーコレーション転移という現象が観察される。しかし、このパーコレーション転移の挙動が電子の場合と異なるのだ。

 

すなわち単純にクラスター形成過程をシミュレーションするプログラムでその様子をシミュレーションできない。その理由はクラスター間のわずかな隙間が熱伝導性に影響を与えるからだ。

 

さらに熱伝導性の異なるフィラーを樹脂に混練してその熱伝導性と添加量の関係を調べると、すべて同一の曲線に乗ってしまう。熱伝導性の良い銀やダイヤモンドを用いても安価な石英粉と同様の効果しか現れないのだ(2004年無機高分子研究会報告)。

 

これは高価なダイヤモンドを用いても安価な石英粉とその価値が変わらないという見かけ上悲しい結果だ。

 

フィラーの工夫で熱伝導樹脂を設計しようと考えている人には、少しショックな情報かもしれない。しかしそのような人がホッとする話を後日気が向いたら書く。ただし、結局バインダー開発が必要になる。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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