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2017.11/06 (フィラーを用いた高分子の機能化)科学の世界における誤解(12)

電気粘性流体で当方は半導体微粒子の開発を行っている。しかしこれは電気粘性流体のあるべき姿について解明できていなかったからだ。

 

フィラーの開発は難しくない。特性をみればその構造を設計できる。構造化された形式知を忠実に実現すれば、大半のフィラーは開発できるのではないか。

 

サラリーマンはとかく開発をしながら出世欲に惑わされる。その結果現象に潜む問題の科学的本質を見落とす。30年以上の研究開発の現場で、上司に忖度し科学的本質を見落とした研究者を何人も見てきた。

 

しかし、素直であろうと誠実真摯であろうと溶媒の役目をする高分子の開発は難しい。形式知が乏しかったり、科学者の都合に合わせた形式知だったりするからだ。形式知そのものが不純だったりずぼらだったりする場合もある。

 

高分子の教科書に書かれた内容は、形式知として正しいが、必ずしも経験知と比較したときにそちらが正しいわけではないことも知っておくべきだ。例えばフローリーハギンズ理論は不完全でありながらそれを憶えなくては大学のテストで点を頂けない不条理な理論だ。

 

このような理論はその考え方といっしょに理論に潜む問題点を形式知として整理しておくことが重要である。実務では問題点に注意して経験知を活用する姿勢が大切だ。

 

すなわち論文にまとめたり、学会発表するときに形式知は重要になるが、実務の開発では、このような形式知は参考とすべき知識の位置づけになる。

 

参考とすべきなので、整理してすぐに参照できるように頭の中に準備しておく必要がある。形式知を頭に入れる必要がない、と言っているのではない。ただテストで点を取るための憶え方でなくて良い。

 

例えば、初恋の人の名前を忘れてもその印象を憶えている、というような記憶の仕方である。どうでも良い位置づけの記憶というと言い過ぎかもしれないが、知識の中には、刺激を受けたときにぽんと飛び出してくるような程度で役立つ場合がある。

 

目の前に起きている現象を理解するときにまず参照すべきは形式知である。これは科学の時代の常識である。人類が科学の時代に技術を急速に進歩させることができたのは、新たに生み出される形式知を参照しながら技術開発を進めたためだ。

 

形式知を参照して、おかしい、と感じたら新たな発明が生まれた瞬間である。その瞬間を見失ってはいけない。自然の女神は、嫉妬深い。過去の形式知の美しさに目を奪われた瞬間に「さよなら」となる。

 

この意味で、研究は若い人に勝てないが、技術開発は経験豊富な「オジサン」のほうが女神の扱いに慣れているのでまだまだ現役で若い人に勝負できると思っている。明日の講演会では最近つきあっている女神の話を少しする。添加剤の話だが、怪しい話ではない。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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