2017.11/21 材料の信頼性(2)
トヨタ自動車は、神戸製鋼の不正報道以後、納入された材料で製造された製品に問題なしと発表している。金属材料も、材料合成と成形プロセスが異なったメーカーで行われるので、成形プロセスメーカーに技術力があれば、多少の材料ばらつきを成形プロセスで補うことが可能だ。
高分子材料の射出成型を研究されているある高名な先生に、射出成型技術の研究目標は、と尋ねたら、どのようなコンパウンドが提供されても安定な射出成型ができる技術開発だと申された。
「その実現は無理です」とあっさり返したら、究極のターゲットに対してチャレンジしてゆくのがアカデミアの研究だ、と威勢のいいことを言われた。ぜひ頑張ってほしい、と思ったが、このような考え方が実務では誤解を生む原因となる。
だめなコンパウンドからは良好な成形体を作れないのだ。10年以上前に押出成形でPPS中間転写ベルトを開発したが、外部のコンパウンダーから提供されたダメコンパウンドをあきらめ自分でコンパウンド工場を建ててゴールを実現している。
外部コンパウンダーは、成形技術がダメだ、と主張し続けていた。前任者が6年間開発してきて、満足な歩留まりの得られなかったコンパウンドに見切りをつけたのはコンパウンダーの「素人は黙っとれ」という一言だった。
半年後に製品としなければセンター長の首が飛ぶかもしれない状況で信頼性の低い外部コンパウンドと心中する気持ちにはなれなくて、センター長に「素人ですが投資をしていただけますか」とお願いした。
「その正直に投資をしよう」ということで得られたお金が8000万円。ゼネコンから頂いていた建設費見積もりが2億5000万円。中古の機械を集めて自力で立ち上げるしかなかった。従業員10名ほどの根津にある中小企業には大変お世話になった。
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