2018.01/17 科学と技術
科学と技術は車の両輪である、というのは学生時代にある実務家の講演で聞いた言葉である。ところが新入社員研修で、科学的な技術開発を全否定されていわゆるカルチャーショックを受けた。
その半年後、アカデミア以上に充実した設備を持ち、業務の進め方もアカデミアと変わらない職場に配属され頭が混乱した。
タイヤという商品がどのような技術で出来上がっているのか説いた役員は、同期の父親であり、その人柄は技術者の鏡だった。この技術哲学の講演を聞き、科学とは異なる哲学が世の中に存在し、それは人間の営みそのものであると感じた。
人間の自然な営みであるはずの技術だが、18年間の科学教育で忘れてしまっていた。ただ、その教育の中身について今から思い出すと、技術の方法も見え隠れしていた様に思う。例えばコーリー博士の逆合成という考え方だ。
また、先端であるはずのコンピューターの授業は、科学と技術が混在した内容だった。情報科学は生まれたばかりだから、というのが先生方の見解だったが、情報科学は科学を道具として使い技術の方法で発展しているように見える。
「技術者の心眼」を読むと、科学偏重の教育に対して警鐘を鳴らす著者の思いに感動する。また、「マッハ力学史」では、科学誕生以前における人間の技術開発の営みの様子を述べている。「方法の擁護」では、科学で行われる否定証明を科学で完璧にできる唯一の論法と紹介している。これら3冊の本は科学と技術に携わる人が読んでおきたい良書である。
カテゴリー : 一般
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