2018.01/21 小室哲哉氏引退
コンビニの店内で販売されていた昨日の大衆紙の一面は、小室哲哉氏の引退記事が多かった。確かに一時代を築いた作曲家かつ歌手、プロデューサーである。人生100年時代では、60歳の引退はこのような扱いになるのだろう、と思った。
ところが手にした大衆紙の記事には、不倫の禊ぎとして引退する、という内容ばかりだった。小室哲哉氏の不倫を報じることで、どれだけの社会的影響があるのか知らない。
彼は、独身時代に今の配偶者と交際しながら、同時並行に他の女性と浮き名を流してきた人物である。女性衆院議員の不倫疑惑ほどのニュースとして世間の興味をひかないのではないか。
また、彼の現在置かれた状況から不倫という問題でマスコミが取り上げるのは、彼に対する同情からの批判が出るかもしれない。女性議員の不倫疑惑とは問題が異なる。
多くの新聞各社は60歳引退で読者を惹きつけたかったに違いない。だから、タイトルの多くは引退の文字が大きかったが、一部不倫を大きく報じた新聞があり、これは的を外している。
創造的な仕事をしている人が、時代の急流についていけず、その才能に限界を感じて早々と引退、というのはいつの時代でも世間の話題となる。また、自分で才能に限界を感じ、それを打破できる気力が無ければ引退した方が本人も幸福であるが、華やかな世界では第三者から見たときに惨めさは増幅される。
技術者も創造的な職業の一つだが、昨日の羽生名人の姿勢のように、想定外の出来事に遭遇したときに、初めてその局面を前にしたらどうするか、と考える心の余裕や考え抜く気力さえあれば、いくつになっても楽しく仕事ができる。
また、技術者は新たな経験知を未知の自然に対抗するための新たな武器とすることができるので、経験知獲得の意欲さえあれば良い、ある意味長寿の時代に適した創造的職業かもしれない。
小室哲哉氏が売れていた時代に、グローブや華原朋美、安室奈美恵の曲を聴いたが、どれも同じに聞こえた。まるで演歌のような曲作りという印象だった。同じような旋律を歌手の変更により新鮮に聴かせているだけ、というのが当方の評価である。
セラミックスから高分子までまったく畑の異なる材料を扱ってきた経験からどうしても評価が辛くなるのかもしれない。しかし当方の仕事も扱った材料の範囲は広いが、混ぜる技術しか考えていなかった、と言われると辛いが、最近は、新しいチャレンジとして牛や羊を相手に格闘している。
混ぜる、というプロセシングは奥が深いのだ。混練プロセスでは、混ぜるだけでは不十分で如何に練り上げるかが求められる。セラミックスでは混ぜるプロセスと粉砕が同時に生じることもある。同じようなコード進行で曲をつくる場合と比較し難易度が大きく異なる。
また、その対象は味も素っ気も無い単なる材料だ。純粋に知的欲求を楽しめなければ、面白くも何ともない将棋の棋士ような仕事だ。ただ、期待以上の成果が出たときの喜びは大きい。「期待以上」の成果が得られるところが、形式知100%の科学の研究と異なる。
(注)科学的研究では、仮説にあった結果が出ることが求められる。結果が仮説から外れたのに仮説どおりのように修正することは捏造と言われている。技術では、機能が実現さることが重要で、期待した以上の機能が得られたときに、それを技術の成果にしても捏造とは言わない。ただし繰り返し再現性が求められる。
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