2018.01/22 高分子の難燃化技術(9)
高分子にはポリフェニレンサルファイドのように空気中で燃えにくい材料もあるが、多くの高分子は空気中で燃える。
高分子の燃えやすさを材料の燃焼雰囲気における酸素濃度で指数化したLOI(極限酸素指数)で表現したときに、この値が21以下の高分子は一度着火すると長時間燃え続け、材料をすべて燃やすまで燃焼が止まらない。
炎が小さいと火が消えることもあるので、LOIも含め各種燃焼試験法では着火するときの炎の大きさを規定している。
高分子材料を各種燃焼試験に通過できるよう変性する方法には、1.燃焼面を炭化促進する方法と、2.燃焼熱で材料を溶融させ火を消す方法が知られている。
2の方針で設計された材料は、LOIが21以下でも、空気中で火が消える。しかし、1の方針の場合には、難燃剤を添加してLOIが21を超えるように材料設計する必要がある。
いずれの方針にしても形式知では扱いにくい。例えば、リン原子の含有率とLOIとは、注意深い実験を行うと良好な線形性が観察されるが、実験者によりその傾きが変化したり、ひどいときには線形性が観察されないこともある。
これらのばらつきや再現性の問題は、経験知としてプロセシングの問題が大きいと考えている技術者は多い。プロセシングを十分に管理し、データをとると、リンの含有率とLOIとは、LOIが21以下の領域で極めて高い相関を示す。
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カテゴリー : 高分子
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