2018.02/26 記憶に残る
平昌オリンピックでは、4年に一回というオリンピックゆえの様々なドラマが生まれている。その中で、当方が印象に残ったのは、フィギュアスケートである。
高得点をとれるようにジャンプをすべて後半に集中してきた最年少金メダリストザギトワには驚いた。後半のジャンプは、疲労により難易度が高くなるという理由で、評価点が1.1倍になる。
全体の印象で明らかに優れていたメドベージェワが金メダルを取れず、また長洲未来が果敢に挑戦していたトリプルアクセルのような他を圧倒する技も示さず、金メダリストに輝いているのを見て、例えかわいくても許せない気持ちになったのは当方だけか。
ルールを最大限に活用しているのだから、頭が良い、と評価する考え方もある。また白鳳のように勝つことが大切という価値観もスポーツでは許されるかもしれない。
しかし、スポーツ観戦の面白さあるいは感動は、得点稼ぎの工夫よりも競技に求められる肉体能力のベストを尽くそうとする挑戦の姿勢から生まれる。
だから、オリンピックというプレッシャーで実力を発揮できず、しかし勝敗ではなく実力者の意地を見せて6位となったネーサンチェンが、浅田真央選手同様に記憶に残ったりする。
彼は、SPで全てのジャンプを失敗し、17位発進とメダルは絶望的となった。しかし、FSで4回転ジャンプ6回に挑戦し、うち5本を成功させ、フリーで自己ベストを更新、優勝した羽生のフリーの得点を8.91点上回る215.08点をマークした。
さらに、このFSで叩き出した技術点127.64点は、技術点としては歴代1位である。これを、勝たなければ意味が無い、の一言で片づけてよいものか。現時点で人間が氷上でできる最高の演技を示したのである。
羽生選手が勝利者インタビューで4回転アクセルを目指す、と回答したのは、このネイサンチェンの演技を見て4回転の次の段階を感じた発言かもしれない。
羽生選手はケガをする前のインタビューで、すべての4回転を目指しオリンピック後引退するような発言をしていた。もし、彼がネイサンチェンの演技を見て次の段階を切り開く意欲から4回転アクセルへの挑戦を意識したならば、これこそオリンピックが「闘争」の昇華した姿であることを示した。
ちなみに、2014年ソチオリンピックにおいて、浅田真央は、トリプルアクセルを組み込んだ女子シングルのSPの演技で転倒が相次ぎ16位と大きく崩れ、演技後のインタビューでは「何もわからない」と放心状態となっている。
しかし、翌日のFSでは冒頭のトリプルアクセルをクリーンに着氷し、また、女子史上初となる全6種類、計8度の3回転ジャンプを着氷し142.71点と自己ベストを更新してFSでは3位、技術点ではキムヨナを抜いていた。
ネイサンチェンは金メダルの可能性が限りなく高かった。しかし大舞台でプーさんの嵐に見舞われ、その実力を十分に発揮できずに終わった。人生には運も影響し、不運に対峙する姿勢でその後の人生は大きく影響をうける。決してプーさんを恨んではいけない。
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