2018.05/11 産業構造の変化と働き方
産業構造が変化しているが、それに対応できないもしくは対応に遅れている企業では、スタッフである知識労働者の働き方を変えない限り、その変化についていけない。大企業もしくは中堅企業では特に組織がしっかりしているので、これが足かせとなり意識改革を難しくする。
ゴム会社の研究所で勤務していた時に、1年もしくは長くて2年で組織構造そのものが目まぐるしく変わった。セラミックスを担当していた時には、メンバーを減らされ、最終的に一人となったので、組織が無くなったようなものだが、一応開発ユニットだったので、大変だった。自然と働き方を変えなくては成果を出せなかった。
一人で開発と営業を担当していた上に、電気粘性流体の仕事まで飛び込んできたときには、一瞬途方に暮れたが、住友金属工業に一部仕事を移管する決心で問題解決できた。
結局この移管した仕事はやがて住友金属工業が事業を辞めることになったので全部ゴム会社に回ってくるのだが、それは当方が転職した後だった。
およそ一人で処理ができないほどの仕事を詰め込まれたときにどうするか。自殺するような問題ではなく、実は簡単な問題である。
優先順位の高い仕事だけに絞ればよいだけだ。優先順位を下げた仕事についてやらない代わりに、もし自分がやらないときの影響を考えるのだ。産業構造の変化が起きているときにはほとんどの場合に、その「仕事をやらない」影響は小さくなる。
しかし、仕事をやらない影響が本当に0となることは無いので、もし気になるならば、その仕事のゴールだけかたずけるという方法がある。これは難しいことではない。他の人にお願いするだけでよいのだ。
それぞれの役割からお願いできる人がいない、というケースは無いはずだ。もし、お願いできないような仕事ならば、実はそれは不要な仕事なのである。
ここで、上司に相談することもそのお願いの一つだ。この時の相談内容を仕事の中身で考えてはいけない。あくまでその仕事のゴールについて相談するのである。判断能力の優れた上司ならば必ず解決してくれるはずだ。
ここで、ブーメランのように仕事が回ってくるならば、その会社は終わっているのだ。その仕事をやらないことで叱責を受けても気にすることはない。上司のほうが職場異動するはずだ。
乱暴な解決法に見えるかもしれないが、産業構造の変化が起きている分野では、一時的に見かけの仕事が増える。それは不要な仕事が続いている中で新しい仕事が増えているからだが、この時古い不要な仕事を捨て去ることができるかどうかが構造変化への対応で重要になってくる。
ゴム会社の研究所で頻繁にリストラが行われたのはマネジメント能力の欠如ではなく、組織改編により継続すべき業務と捨て去る業務とを担当者に考えさせるためだった。当方が担当していた業務で捨て去ってもゴム会社の売り上げが減るようなことは無かった。
そのとき、当方が企画し6年間苦労して選択し継続した業務が30年以上たった今でもゴム会社で続いている。FD事件の原因となった電気粘性流体の研究は十分な事業にもならず、当方の転職後消滅している。
ちなみに消滅する運命にあったこの研究の最も解決が難しかった耐久性の問題は、当方がお手伝いを依頼された時に当方が高純度SiCの業務の傍らで解決している。また性能アップのためのオイルや粒子の問題も同様である。
これは公開されている特許に足跡として残っているが、高純度SiCの事業を住友金属工業とのJVとして一人で進めていた時の「片手間の」仕事である。
実際のところはFDを壊されたりしてデータ回復など余分な仕事が増え、死んでしまいたいぐらい忙しかったが、高純度SiCの仕事の一部を住友金属工業に肩代わりしていただき続けたのである。つらい思い出であるが、その結果仕事とはどのように行えばよいか、極限状態で理解することができた。
カテゴリー : 一般
pagetop