2018.06/29 形式知の限界(5)
界面活性剤を実務で活用するときにHLB値は一つの指標である。また、500種近くの界面活性剤を主成分分析しても第一主成分にHLB値が大きな寄与として現れるぐらい重要なファクターだ。
ただし、第一主成分と第二主成分の軸で界面活性剤をマッピングしてみると界面活性剤の複雑な機能がそこに現れてくる。すなわち同一HLB値でも界面活性効果が変わる場合が存在する、という意味だ。
溶媒に分散しミセルを形成するぐらいの話であれば、HLB値を指標にして研究していても間違いは起こりにくいかもしれない。
しかし、電気粘性流体とゴムを組み合わせて、ゴムから有象無象のブリードアウトが生じているようなカオスの状態における現象を扱う時にHLB値だけで議論は困難になる。
それではこのような場合にどうするかは、試行錯誤、すなわちやってみなければわからないのである。この、解決するためにやってみなければわからない、という言葉を頭から否定する人がいるが、そのような人は技術というものが分かっていない。
そもそも形式知だけで問題を解決できるならば、実験など不要である。実験は仮説を確認するために行う、は当方も好きな言葉であるが、当方はこのあと、但し、仮説と異なる結果がでたら、迷わず試行錯誤を行え、と部下を指導してきた。
仮説と異なる結果が出たら解析せよ、という人もいるが、解析も大切だが、技術では仮説の正しさよりも「機能」が重要で、山中先生が常識外れの24個の遺伝子をすべて細胞に組み込もうとした実験のような取り組みの方が技術開発では優先される。ノーベル賞学者でも掟破りの実験を行える勇気があるのだ。
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