2018.07/11 高分子と無機フィラー
高分子の改質のために無機フィラーを添加する。例えば、弾性率を上げたり、導電性を付与したり、難燃性を向上したり、と様々な目的がある。
ゴムには昔からカーボン粉末がフィラーとして添加されてきた。その目的は硬度向上であり、カーボン粉末を大量に入れると硬くなりゴムとしての性質も小さくなる。
硬くて柔らかい(衝撃吸収という意味の柔らかさ)という矛盾したゴムを設計するためには、硬度を上げる手段をカーボンではなく架橋密度に期待することもできるが、1970年代に樹脂補強ゴムという硬さを全く異なるコンセプトで向上する技術が開発された。
これは、無機フィラーだけでは性能改善が行き詰まった時にポリマーアロイでブレークスルーした事例である。
無機フィラーの組み合わせで二律背反の性能を改善した事例もある。例えば転がり抵抗とグリップ特性の改善という省燃費タイヤ技術では、カーボンとシリカの組み合わせでブレークスルーが可能となり、シリカの改良については現在でも特許出願が行われている。
高分子と無機フィラーの組み合わせについてもこのように要求される特性に対して、無機フィラーと高分子、あるいは2種以上の無機フィラーの組み合わせで検討される時代になった。
無機フィラーについては混練中にそのフィラーの組成が変わることはないので、その表面状態が高分子への添加でよく考えなければいけない問題で、溶媒に溶質が溶解するかどうかを指標で表すSPを粉体に拡張する試みが1980年前後から試みられている。
また表面を化学修飾する技術も同時に開発が進み、多くの種類のカップリング剤が販売されている。カップリング剤の知識は無機フィラーを高分子に分散するときに要求される知識の一つである。
カップリング剤技術の面白くない点は、コストが高くなるところである。カップリング剤の価格とプロセシング価格の上昇を考えなければいけない。
ゆえにカップリング剤を使用しない技術というものも発展しているが、これはノウハウとして使われることが多く、表に出てこない。当方は科学的にはよくわからない場合が多いという理由で、このような技術に魅力を感じる。
また、AIでも考えつかない技術が存在する。特許には科学的に説明が難しいためか、驚くべきことに、と説明されていたりする。それほどびっくりするような技術でなくても特許を書いている人が驚いて見せなければ発明にならないような技術だ。
ところで高分子と高分子のブレンドではχを用いるが、SPで評価することも行われる。無機フィラーもSPで議論できるので、高分子のブレンドでは、SPのほうがχよりも便利かもしれない。
カテゴリー : 高分子
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