2018.07/21 知識(10)
学会参加は知識獲得のための良い機会である。理解できなくても参加するだけで知識は増える。ただし、知識を求めようという意欲が無ければ無駄な時間を過ごすことになる。学会を情報調査の目的で行くのもよいが、知識獲得が正しい姿勢だ。
学会へ参加した部下のレポートが貧弱だったので書き直しを命じたことがある。部下の回答は、新しい情報が無かったからだという。日頃の仕事ぶりからそれほど知識があふれているとは思われないので、それは嘘だろう、と言ったら、予稿集を持ってきて、フィルム関係はこれだけしかなかった、と説明してくる。
予稿集を見てみると、接着に関する発表やコールコールプロットのグラフが載っていたり、その他直接現在担当している仕事とは無関係だが知識として整理すべき情報はたくさんあった。
そこで部下に「この講演はどうだった」と尋ねると、「それは電極の話で、仕事に関係ありません」という。フィルムのインピーダンスを研究していた時期だったので実験方法が参考になったかもしれない、と注意すると、講演を聞かなかったのでわからない、と頓珍漢な答えである。
彼の学会参加の目的は、知識にあったのではなく、仕事に密着した情報収集だけだったのだ。だから仕事と異なる分野には無関心となり、講演すら聞かない。これでは知識は増えてゆかない。
学会の良いところは、研究者の経験を共有することができる点である。同じ現象を見ても身に着けている知識が異なると見解が変わる。教科書には形式知に沿った説明しか出てこないが、学会の研究発表の中には偏見ともとれる考察を聞ける場合がある。
その見解が正しいかどうかは、当方は学者ではないので問題にしない。むしろそのような見解を語らせている経験知や暗黙知に注目する。やや癖のある見解に、自分とは異なる発表者の知恵を見ることができるので、質問をするようにしている。学会に参加して新しい情報が無い、という経験はあるが、勉強にならなかった経験は無い。
カテゴリー : 一般
pagetop