2018.07/23 有料のセミナー
土曜日はサラリーマン時代に部下を学会へ出張させたときの話題を書いたが、学会以外にセミナー会社が開催している有料のセミナーがある。お弁当付きで5万円前後の価格で学会参加費よりはるかに高い。
退職後の技術成果は、もっぱらこの有料セミナーで公開している。理由はかつて若いころのトラウマと昨日書いたような実体を考慮してのことである。また、学会で発表するときにはお金を支払わなければいけないが、有料のセミナーでは逆に講演料を頂けるからわざわざ学会で発表するメリットが無くなる。
それでも学会から依頼されれば、講演料が無料でも条件付きで引き受けることにしている。その条件は学術データが無くても文句を言わないことである。すなわち、技術は機能の実現が目的になるので細かい機能と無関係のデータをわざわざ収集しない。
例えば、これは水に不溶のホスファゼンはじめコロイドになっていない難燃剤をコロイドにする技術の事例だが、この技術ではたった一日で皮革の難燃化まで実用化したため、公開できるのは正真正銘難燃性能に関するデータだけである。
オイル分散を使用せず、水不溶性の固体のコロイドを製造する技術は教科書にもいくつか書かれているが、今回開発した手法は、それらと全く異なる方法で学会で発表しても参考となる技術である。
しかし、35年以上前にフェノール樹脂とポリエチルシリケートから合成した前駆体を用いて高純度SiCを合成した成果を発表したときにSiCの反応速度論の話をしたら前駆体の質問が出た。企業の立場ではノウハウになるので答えなかったところ、無茶苦茶な言われ方をした(注)。
この技術発表以外にPPSと6ナイロンを相溶させた材料を用いた中間転写ベルトの学会技術賞の審査会では「嘘だろう」とか、有機無機複合ラテックスでは、「そんな技術は皆知っている」とか信じられないアカデミアの先生のご意見が飛び出した。
前者については企業の方がその後ポリマーフロンティアにおける発表の機会を設けてくださったのでカーボンクラスターの制御についてカオス混合技術を新たに開発した話として講演させていただいたが、これでは企業の技術者が学会発表をしなくなるのは当然だ。
このような経験から、新技術については有料セミナー以外では依頼されない限り学会で公開しないことにした。PPSと6ナイロンの相溶については審査会で透明なストランドを見せたが、6ナイロンが低分子量化したからだろうなどと適当な考察を言われた審査員の先生もおられたが、今そのストランドはスピノーダル分解が起きたために白濁している。
(注)その後この時の発表をベースに学位論文をまとめることになるのだが、国立T大某先生は頼みもしないのにまたその研究に関わってもいないのに勝手に自分を第一著者にして論文発表している。無機材研の先生方にしても必ず発表前には小生の許可を申し出てくださったがこの先生は勝手に自分のご研究のように発表された。それでも学位論文のお世話をしてくださったのなら多少は我慢できるが、結局T大のこの先生はなにもしてくれず、学位審査に関わる他の主査の先生から奨学寄附金の請求を受けたため、ゴム会社からすでに奨学寄付金が支払われていたこの大学を当方から辞退している。何もしなくても金さえ出せば学位を出すというような態度で腹が立ったばかりでなく、いかがわしい店と変わらない怪しげな扱いだった。その後中部大学で学位を取得しているが、中部大学では親切なご指導と英語とドイツ語の語学試験も実施されたフルコースの試験など丁寧な審査で学位の価値を十分味わうことができた。なおこれは25年以上前の話だが、当初英文でまとめた学位論文をすべて日本語に書き直している。理由は英文であるとコピペをされてもわからないから、ということだった。すでにコピペ対策が取られていたのだった。たしかに日本語であれば文体にそれぞれの個性が出るのでコピペ部分はわかりやすい。
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