2018.07/26 高分子の劣化・寿命(2)
材料の品質データねつ造があっても、その材料を採用している製品には影響が無い、というニュースを聞いて奇妙に思った人は多いのではないか。また製品品質に影響のない材料の品質をなぜ管理しなければいけないかという疑問も出てくると思う。昨日はこのような事情になる原因を少し説明したが、具体的な高分子の劣化あるいは製品寿命について本日は書いてみる。
高分子材料が構造材料として用いられたときの寿命とは、例えば引張強度や曲強度、圧縮強度などの製品品質がそれら仕様として決められた強度の値を下回ったときである。このように具体的に分かっていてもその寿命を材料メーカーが品質保証するとなると難しい問題がある。
原因は、この寿命が高分子材料の品質だけで決まらず、材料が形になり製品に組み立てられた状態、ざっくり言えば成形技術と製品設計技術の影響を受ける。極端な例として、材料の品質など無関係で、例えばポリスチレンならばどのような品質のポリスチレンを用いても製品寿命を長くできる成形技術や製品設計技術というものが存在する。
例えば製品のコストダウンを図る場合には、どこのメーカーのポリスチレンでも使えるように製品組み立てメーカーは、このような技術を開発する。具体的には、各メーカーから販売されているポリスチレンの種類を誤差として見立ててタグチメソッド(TM)を行えばそれが可能となる。
このTM実験で使用する制御因子や調整因子については製品組み立てメーカーのノウハウであり、材料メーカーは知ることができない。仮に教えられても、基本機能の評価技術を材料メーカーは持っていないのでTM実験を同じように行うことができない。
製品組み立てメーカーは、TM実験によりどのようなポリスチレンを用いても可能であるにもかかわらず、一応実験に用いたポリスチレンのスペックを決めて材料メーカーへ発注する。そこに材料の寿命スペックを入れる場合もある。これを材料スペックとして決められると材料メーカーは、捏造の機会を抱え込むことになる。
材料の寿命を材料メーカーが品質管理する技術は、製品組み立てメーカーが同様に管理する技術よりも数段難しくなる。仮に寿命評価法をすり合わせたとしても、さらに成形技術を完璧に同等としても、製品の調整因子まで明らかにされなければ、その難易度は同等にならない。
材料メーカーのリスク管理の視点では製品寿命に関わるスペックを受け入れてはいけない。この点について質問のある方は問い合わせていただきたい。製品寿命について材料スペックをどのように決めるのかは難しい問題ではなく、***である。
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