2018.10/30 反応速度論(3)
高分子の結晶化の速度論で使用されるのはアブラミ式である。たとえそれでうまく合わなくてもアブラミ式で整理してあると学会の議論では深い突っ込みが無い。
問題はラメラの段階だけで議論しておればよいのだが、球晶として成長するところまでこれで取り扱っている研究が多い。このあたり、突っ込みたくても当方もどうしたら良いのか分からないので、怖くて質問できない。
一休さんが屏風に描かれたトラを捕まえてみよ、と言われて、それではそのトラを追い出してくれたなら見事に捕まえて見せます、と応えることができたのは、屏風のトラなど追い出すことができないことを理解していたからだ。
高分子の結晶化の速度論的取り扱いについて突っ込めないのは、このようにトラが出てこない確信が無いためだが、アカデミアに籍を置く人は勇気を出して質問すべきだろう。
最近この高分子の結晶化について奇妙な現象に遭遇した。結晶化を促進する添加材があるならば、それを抑制する添加剤もあるはずだ、と軽い気持ちで開発したのだが、どうもその添加剤は結晶化速度を遅くし、球晶への成長だけを抑制しているようなのだ。
本来は研究すべき、あるいは研究したい対象だが時間が無い。忙しいから時間が無いというわけではなく、ほかにやりたいことが多く、当方の生きている時間の中で、優先度が低いためだ。若ければ道草をしても研究していたかもしれない。
SiCの速度論の研究では、熱分析のメーカーが、装置を完成できないと投げだした超高温熱天秤をソフトウェアーからハードまで当方一人で開発した。若い時には時間は無尽蔵にあるような錯覚があったが、最近は長時間かかりそうな仕事を避ける傾向がある。年を取ったと感じる瞬間である。
カテゴリー : 高分子
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