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2018.11/05 高分子の熱分析(5)

熱分析装置は、最初に無機化合物の研究で活用された。1970年代末ごろから高分子への応用が行われるようになった。この普及により高分子のガラス転移(Tg)点の研究も進んだが、高分子のTgやTcの熱分析における挙動が無機化合物のガラスで観察される様子と少し異なる点についてあまり深い議論がなされていない。

 

熱分析法で反応速度論的解析を行う場合に昇温速度を変えたり、恒温測定を行ったりして活性化エネルギや速度定数を求めたりできるが、高分子では無機化合物のように反応途中までしかモニターされたデータと仮説とがうまく一致していない事例が多い。

 

例えば、シュウ酸やポリエチレンのような単純な構造の熱重量分析では、フリーマン・キャロル法やドイル小沢法でモニターされた90%以上の速度論データをうまくまとめることができる。

 

しかし、ポリエーテル系ポリウレタンでは、発生ガスをモニターしながら一次構造のどの部分が分解しているのか重量減少カーブとの対応を確認しながら解析すると構造によっては30%程度過ぎたあたりからノイズ成分が多くなる。

 

添加剤が添加されたポリウレタンでは、熱重量減少カーブの単純な解析が困難になる。但し添加剤とマトリックスとの相互作用を仮説し、その変化の様子を説明することは可能である。それでも学会発表に耐えうる解析までまとめ上げるには、発生ガスや熱分解途中の生成物について分析するなどの手間が必要になる。

 

このような面倒な手続きが必要という理由で、熱分析装置が使われなくなっていった、と思われ、熱分析装置専業メーカーの倒産や異業種への転換も起きている。しかし、高分子の実務では熱分析装置はおおよその現象を迅速に知ることができるので便利である。

 

 

カテゴリー : 高分子

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