2018.11/06 高分子の熱分析(6)
DSCは、40年前に比較し価格が下がってきたうえに便利なソフトが用意されている機種もあり、高分子材料の実務では自由に使いこなせるようにしたい熱分析装置だ。
ブレンド系では、TgやTmの評価が中心になる。タグチメソッドを行ったときに、Tcも含め、エンタルピーと制御因子の関係を調べておくとよい。この測定では、参照側にも必ず試料側に用いたアルミナ粉を入れておくこと。このようにしないと、ベースラインがうまく水平にならない。
昇温速度は10℃/min一定で構わないが、昇温と降温両方のデータを得ておくこと。また、Tgが室温付近であるときには液体窒素を用いてTgよりも40℃以上低い温度から測定開始すること。
まれにTgが現れないときがある。これはTgが存在しないわけではない。このような場合の測定方法は以前この欄で書いているが、その方法ではなく同一ロットのサンプルを再測定することを勧める。
Tgのエンタルピーは、ばらつきが大きく測定され、ペレットの密度と相関する場合が多い。この理由は、自由体積の量とこのエンタルピーは関係している。同じロット内で密度との相関を調べると、かなり高い相関係数となる場合がある。
またブレンド系では、ブレンドされた高分子の数だけTgの変曲点が出るはずだが、これが組成の数だけ出ないこともある。もし、相溶系であれば、観察されなくてもよいが、その場合には、Tgの位置がシフトしている。
13年前にPPSと6ナイロンをブレンドし、DSC測定を行った。二軸混練機だけを用いて通常の混練を行ったときには、それぞれ単独の場合の位置にTgが観察されたが剪断混練を行ったところ、PPSのTgの位置がわずかに低温側にシフトした。さらにカオス混合装置を用いた場合には、PPSのTgの位置と6ナイロンのそれと中間の位置にただ一つ観察された。
このように混練では、混練条件により系のエントロピー項に影響を及ぼし相溶する現象が生じる場合がある。これについて科学的に解明されていないが、技術として十分に活用できる機能だ。
例えばPPSと6ナイロン、カーボンをカオス混合し、冷却速度を調節してやると、均等の大きさとなったカーボンクラスタが現れる。これは6ナイロンのわずかなスピノーダル分解が生じるためと想像している。ちなみにこのクラスターサイズは、6ナイロンをMXD6というPPSと相溶しやすいナイロンを用いると小さくなる。
カテゴリー : 高分子
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