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2018.11/13 高分子の概念

高分子の概念について未だに高分子の科学的に定説となった分類方法が無い、という理由で研究途上と言える。当方が学生時代に重合様式から行われた分類方法を学んだが、それは有機合成高分子だけに適用できる狭義の分類方法だと気がついたのは大学院で無機材料の講座に進学したときだ。

 

4年生の卒論では、布施明のヒット曲でもある「シクラメンの香り」の主成分の全合成をまとめ、アメリカ化学会誌のショートコミュニケーションにそれが掲載された。しかし、教授が定年退官ということでその研究室が閉鎖され、学部学生は他の研究室へ変わることを余儀なくされた。

 

そこで同じ研究室にいた友人と相談し、大学院の入学試験では希望先に入れていなかった無機材料の講座へ進学することにした。大学側は後ろめたい気持ちがあったのか、すんなりとそれを認めてくれたが、その結果として、本来その講座で進学予定だった学生が他の講座へはじき出される事態も起きている。大学院では成績順に学生をとる決まりになっていたからだ。

 

今から思えばはじき出された学生にかわいそうなことをしたという思い出として思い出されるが、当時は進学予定にしていた講座をつぶされた思いの方が強かった。教授の権力闘争の結果といううわさもあったので、アカデミアというものにうんざりするとともに大学に対して学びの場という敬愛の思い出も吹っ飛んだ。

 

おまけに進学した講座の教授が有機合成に関し優秀な学生が来てくれた、と過大な期待をされて、とんでもないテーマを出してくれたので大変だった。指導してくださった先生は、さっさと投げ出して他のテーマをやらないと修論がまとまらない、と本音で親身に指導してくださったので、これまた議論の毎日だった。周囲からは喧嘩をしているように見えたらしい。

 

この先生、テーマを辞めろと言いながら、一方で当方の主張を聞いていてくださったようで、図書室にケミアブの最新版が届くと、いつも調べに行っていたことをある日気がつき、その教育者としての「愛」に気がついた。本当はやってはいけないことだが、ケミアブの記事の横に鉛筆で当方が読むべき記事に〇をつけてくださっていた。

 

最初誰がそれをやっているのか分からなかったので「公文書に鉛筆で書き込みをしている人がいるようだ」とその先生に話したら、図書室の美人に報告したほうがよい、と言われたのでその美人に報告した。彼女は、犯人はわかっているけど、というだけだった。

 

当方はこの質問をしたことを反省したのだが、この落書きのおかげでとんでもない研究テーマについて2年間に3報研究報告として論文発表出来て、修士論文をまとめることができた。

 

その修士論文では、Holliday博士の著書アイオニックポリマーに掲載された高分子の論文を紹介し、無機高分子という概念をホスホリルトリアミドの縮重合やホルマリンとの共重合を事例に展開している。新素材であるホルマリンとの共重合体についてはPVAの難燃化研究としてその機能確認を研究している。

 

合成反応を元に有機高分子の分類を授業で説明された高分子担当の教授は学会で少々有名な先生だったが、未来を見据えた研究者としての視点を持っていなかったという理由で落第点をつけたいと、大学院を修了するときに思った。また大学院でご指導してくださった年配の助手の方は高分子学会で無機高分子研究会をその年に設立されている。

 

高分子の分類については未だに定説が無いと思っている。Holliday博士のゆるい分類法は未来の材料開発を指向したときに役立つ分類法である。最近では西先生による高分子の作り出す構造サイズに着目した二次元の分類法が発表され階層構造の研究の方向性を導き出している。概念が研究の方向を導いた事例だ。

 

優れた研究者というものは新たなコンセプトで研究の方向性を指導できる研究者だと思うが、学生時代に授業を受けた先生のように研究者の肩書とその能力が必ずしも一致していない場合が時折あるのがいつの時代でも問題かもしれない。社会的に偉いと格付けされた先生による学生時代の授業を信じたまま卒業していたなら、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂のポリマーアロイの開発など考えなかっただろう。

 

学内で無名の助手が教授よりも優れたコンセプトを持っているなどとは社会からは見えない。最近は整形美人が当たり前となり、男女もわかりにくくなった時代だから肩書などファッションと同じにとらえている人も多くなったのでそれほどの影響は無くなってきたのかもしれないが、昔は男と女が明確に線引きされていたように肩書は品質保証書のようなものだった。

カテゴリー : 一般 高分子

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