2018.11/23 コンセプトの重要性
現象の概念化、そしてそこから機能を浮かび上がらせる方法は、その習慣化で容易にできるようになる。連想ゲームのように円滑にできるようになるとアイデアを考える時にも役立つ。なぜならアイデアを出す方法の一つにこの概念化がある。
故矢島先生のポリジメチルシランを用いたSiC繊維は、炭素繊維と同様の方法で繊維化が行われている。
これは、炭素繊維の製造プロセスを概念化し、そこで働いている機能、すなわち不活性雰囲気におけるポリマーの炭化機能、不融化処理の機能などを抽出する。その理解の後ポリマ-前駆体をポリアクリロニトリルからポリジメチルシランに置き換えて生まれたアイデアだ。
矢島先生のご研究を改めて概念化すると、セラミックスの組成を含んだポリマーを熱処理して高純度のセラミックスを製造するプロセスを思いつく。
ポリマーの高純度化技術は、1000℃以上の高温度で行わなければいけないセラミックスの高純度化技術よりも経済的にできる。
問題はポリマーを用いることの経済性であるが、これは低価格のポリマーを選択することで経済性を上げることが可能となる。
すなわち概念化して考えているときに、SiCだのポリジメチルシランなど具体的な組成は必要ではない。
概念化せず、ポリジメチルシランからSiC化する製造プロセスを眺めながら経済性を論じると、前駆体ポリマーの低コスト合成のアイデアを必死で考えることになる。
これに対して概念化した場合には、すべてのポリマーが対象になるので、アイデアをたくさん出すことができる。例えば安価なポリマーとしてフェノール樹脂は代表的ですぐにその高純度化のアイデアまで出てくる。
ケイ素原は、シリカゾルやポリエチルシリケートが高純度低価格な材料として候補アイデアになる。
このようにして故矢島先生の技術を概念化して捉え、セラミックスの前駆体ポリマーをポリマーアロイで実現するアイデアが生まれた。
ただし、非相溶系ポリマーアロイでは、大きなサイズのドメインで相分離する問題が生じる。この問題解決の手段としてリアクティブブレンド技術まで考えた。
概念化しない場合には、ここまで考えを発展できないが、概念化し、その後具体的にアイデアを展開した結果問題点が見つかり、新たなアイデアの展開を強いられることになりリアクティブブレンドに至った。
これを概念化によるアイデア抽出法の欠点とみるのか、新たなチャレンジの機会を生み出す方法と捉えるのかは、技術者の資質に依存する。
pagetop