2018.11/27 科学だけが哲学ではない
科学は、世界中が認めた一つの哲学であり、これが産業革命以降の技術の発展を加速したが、忘れてはいけないのは、科学が生まれる前にも技術が存在したという事実である。
この技術については、「マッハ力学史」やファーガソン著「技術屋の心眼」に詳しいが、科学が無くても技術開発は可能である。また、現在われわれの身の回りにある便利な道具がすべて科学の成果と思うのは間違いである。
例えば当方が開発したゴム会社の高純度SiCは、その製造プロセス開発に科学を用いていない。ただし、それが妥当な技術であることの証明には科学を用い、論理的に説明し学位を授与されている。
写真会社のレーザープリンターに用いられているPPS中間転写ベルトに至っては、PPSと6ナイロンを相溶させた科学では説明できない材料で技術を完成させている。
退職後科学的に自分の開発した技術を見直し、来年あたり本にまとめる予定だが、技術を生み出すために必ずしも科学は必要ではないと実感している。
ただ共通言語としての科学の恩恵にはこれまで十分に助けられた。その体験からアカデミアにおける科学的研究活動には敬意を払うが、一方人文学の衰退が著しい点を少し危惧している。
人文学の研究者から現在の技術に関する批判なりがもう少し活発に出てきてもよいように思う。人文学の視点で技術の向かうべき方向とかさらには技術開発の方法論まで出てくると面白いように思う。ゲーテの研究だけが人文学ではない。
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