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2018.11/29 カオス混合装置の発明

以前この欄で書いているが、カオス混合装置の発明は、無端ベルトの押出工程を半日以上眺めていて頭の中で完成している。


経験知と暗黙知が大きな役割を果たしているが、とにかく最悪の場合には目の前にある押出機を混練機の代わりに使えばよいと考えていたから気楽だった。


実際の技術の姿は、二軸混練機にカオス混合装置を取り付けてコンパウンドの生産を行っているが、用いているカオス混合装置は、無端ベルトの成形金型の一部、すなわちイメージされた機能部品を3つ重ねたような構造をしている。


カオス混合装置を考案したときに、目の前や頭の中で起きていた現象は、現代の科学では説明できない。


目の前では教科書にも書かれている著名なフローリーハギンズ理論では否定されるPPSと6ナイロンの相溶現象が起きていた。そしてそれを示す音が頭の中に艶めかしい妄想(注)を描き出していた。


現象を科学的に解析してみても、「フローリー・ハギンズ理論によるとΧ=0で相溶が起きる」と教科書に書かれているような現象ではないことを確認できた。


これは非科学的現象と言ってもよいような現象であるが、カオス混合装置の実用化のためにはどうでもよいことだった。ただ、機能の再現確認のために、科学的には否定されるような現象を利用しただけだ。


ところでカオス混合装置の最適化は試行錯誤で行われた。頭の中に完成の姿がほぼできていたので、科学的に開発を行うよりも経済的だった。無端ベルトの金型図面から寸法を読み取り、吐出速度との関係を参考に実験を進め、その機能を完成している。


そこに科学的な根拠があったわけではないので、この発明を科学の成果とはいえない。ただ機能の再現性については統計手法やタグチメソッドを用いて確認している。


また、いわゆる職人の手による成果でもない。おそらく職人ならば何十年もその完成に時間をかけなければ技術を完成できなかっただろう。まぎれもない技術の成果である。


これが可能となったのは、30年以上前のロール混練の経験知があったからだ。それはたった3ケ月間の経験だったが、当時の指導社員のおかげできれいに頭の中が整理され体系づけられていた。ゆえに暗黙知も忘れることなくすべて思い出すことができた。


技術とは、非科学的な現象を前にしても臆することなくそこから人類に役立つ機能を取り出す技である。技術は科学の下僕でもなければ科学を頼る必要もない独立した技である。


ただ、科学があればそれを便利な道具としてあるいは技の一つとして技術の完成に役立てているだけである。ゆえに1970年代に「技術と科学は車の両輪である」と言っていた人がいたが、これは至言である。但し車軸式である必要もなく独立懸架であってもかまわない。


(注)PPSはボツの発生しやすい材料で、押し出されたベルトを後加工しなければ中間転写ベルトに使用できなかった。しかし、頭に描かれた新技術では、PPSと6ナイロンが相溶してボツの無いまさに艶々したベルトが連続して押し出されていた。カオス混合技術により収率が100%近くになっただけでなく、表面のボツを対策する後工程も不要にした。

カテゴリー : 一般

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