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2018.12/15 混練の神様

ゴム会社における新入社員時代の経験談を書いているが、たった3ケ月の指導期間であるにも関わらず、研修終了時のプレゼンでCTOから「技術とは何か」と、同期の社員1名がその説教の直後退職するような激しい技術論の薫陶を受けた直後でもあり、この時の指導社員は高純度SiCの事業化経験と同様に生涯忘れられない人物となった。

 

後輩への技術の伝承はメーカーに勤める技術者の重要な仕事の一つであるが、ゴーンの給与と技術者の処遇とを比較するとそれを重要な使命ととらえ、無償の貢献として行えるかどうか疑問である。

 

ましてや、成果を出しても評価されないだけでなく左遷までされたのでは、私費まで投じて獲得したスキルを無償で伝承しようなどとは考えないものだ。組織と技術者に信頼関係が無ければ、伝承どころではなく逃げ出す技術者も出てくる。経営者はこの点をよく認識しない限り、せっかく蓄積された技術が蓄積されず流出するだけになる。

 

それゆえ技術の伝承を円滑にできる方法を経営者は真摯に考えなければいけない。経営者が真摯に考えない限り、いくら誠実な技術者であっても自己の技術を無償で伝承しようなどとは考えないだけでなく、自ら技術を磨こうとする技術者さえも生まれない。

 

当方が体験した大企業は、自ら技術者として自己実現する人を冷遇する環境だった。指導社員は彼の同期より4年以上昇進が遅れている人だった。彼の実力であれば本来数名の部下を率いて研究開発を推進できたはずだ。しかし、当方が初めての部下となるような処遇をされていた。

 

噂では彼の新入社員時代における上司との折り合いが悪く、よい評価査定がついていなかったという。このような処遇のされ方をされても、彼は当方に対しては熱心に技術伝承をしてくださった。

 

FD事件で転職するまでの12年間ゴム会社に勤務したが、この指導社員ほど混練技術について精通した技術者と出会ったことがなかった。形式知や経験知だけでなく、質問をすれば暗黙知を必死に伝承しようと努力された。その技術伝承の姿勢は、まるで混練の神様のように見えたほどである。

 

 

 

 

 

 

カテゴリー : 一般 高分子

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