2018.12/17 技術開発経験談(10)
指導社員の形式知や経験知、暗黙知の豊富さには驚かされた。また、率先して実験を行われていたが、樹脂補強ゴムのテーマとは全く無関係の実験であるだけでなく、レオロジーとの関係も不明な実験であることも多かった。
指導社員は就業時間後は囲碁をされるのが習慣だった。定時になると業務を終え机の上を整理したかと思うと姿が消えていた。
一度どこに行かれるのかついていったところ、DEMOS室というミニコンの設置された部屋に入られ、その中で囲碁を始められた。
そこは、空調が効き快適ではあるが事務を行う部屋は無く、段ボール箱を広げた上に座り、囲碁を打っていた。指導社員の会社における生活はこのように、朝出勤すると午前中は小生の指導にあて、午後は定時まで自分の業務、定時後は囲碁というのが習慣だった。
知識をどこで吸収しているのか不思議に思い尋ねたところ、出勤の往復時間が2時間あり、本を読むには十分な時間だと教えてくれた。多くの研究員が、講習会で出張しても指導社員は率先して出張することが無かった。
これも不思議だったので尋ねたところ、情報は学術雑誌を読めば先端の情報を容易に取得でき、講習会で間違った話を聞くよりも良い、と言われた。間違った話、という指摘にびっくりしてその意味を質問したところ、教科書通りの話は間違っていることが多いから、と理由を説明された。
そして、大学教授として転職された某部長がご自分の理論に合うように部下に実験させてデータを収集している話を聞かされた。これは当時の高分子科学の実情を知るには十分な事例だった。
pagetop