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2018.12/18 樹脂補強ゴムのロール混練

1970年末にタイヤのビード部のゴムを樹脂補強ゴムで設計する技術が登場している。この時用いられた樹脂はフェノール樹脂である。フェノール樹脂にはレゾール型とノボラック型があり、前者は室温で流動性を有する分子量が低い樹脂を容易に製造可能である。

 

ゆえにゴムへ配合して混練する時の難易度は低い。しかしノボラック型フェノール樹脂はゴムの混練温度範囲で粘度が高く混練の難易度は高い。ゆえにビード部のゴムとして最初に実用化されたのはレゾール型フェノール樹脂との複合化で、その後ノボラック型との複合化で製造された樹脂補強ゴムが登場している。

 

プロセス性の悪いノボラック型フェノール樹脂とゴムとの複合化が検討されたのは、特許回避のためとフェノール樹脂以外の樹脂ではゴムとの複合化で海島構造になりにくかったためである。ゴムへ少量添加しても高次構造が海島構造となるのはフェノール樹脂だけと当初思われていた。

 

しかし、樹脂をゴムへうまく混練できれば、樹脂の少量添加でも樹脂が海となる高次構造をとりうることを当方の指導社員は見出した。そのとき用いられた技がカオス混合である。

 

ところで樹脂をゴムに分散しにくい原因は、ゴムの溶融温度付近で樹脂の粘度が高いためである。これは混練の教科書にも書かれているように、大きな粘度差があるときに剪断流動ではせいぜい10μm程度の構造サイズまでの分散しかできない。

 

伸長流動では、教科書によればその限界が無くなると言われている。混練で伸長流動による混練が20世紀末より注目されるようになった理由である。しかし伸長流動でも、樹脂が溶融していなければ、樹脂の粒子径が大きいとその分散が難しいので、どうしても混練効率の高い剪断流動による分散も必要になる。

 

これが伸長流動と剪断流動とが程よく機能するカオス混合に最近注目するようになった理由である。ロール混練では技を使ってカオス混合が可能である。ゆえに樹脂補強ゴムの混練ではこのカオス混合の技を習得することが最初に必要で、同一処方を用いて1週間混練の練習をした。

 

カオス混合を用いても結晶化している樹脂をゴムへ分散するには難しい。そのような場合には、事前に樹脂を微粉末にしてから混練するが、ゴムの溶融温度で結晶がなかなか融解しないので剪断流動を駆使して分散することになる。

 

このようにゴムと樹脂の混練は難しく、その実現のためにプロセシングの工夫に頭を使うことになる。表面が平滑な二本のロールで混練が進行することも不思議だったが、技を体得し頭を使うと混練効率が上昇する面白さがあった。

 

ロールの表面は平滑だがロール混練を工夫していると脳みそのしわが増えてゆくような錯覚になった。指導社員がニーダーを安直に使用するのではなくロールで混練するように指導された意図を理解できた。

カテゴリー : 高分子

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