2018.12/22 1980年前後の高分子科学
樹脂補強ゴムの開発を担当して自動車用防振ゴムに使用可能な配合を見出した。それが後工程ですぐに製品展開されたが、新入社員の2年間は査定が付かないだけでなく残業代も無い、というルールで深夜残業代も頂けなかっただけでなく成果に対する評価も0だった。
それでもこの3か月の間に指導社員が座学で指導してくださった先端の高分子科学の知識は千金に値するような内容だったので、このテーマと指導社員に感謝している。
さて、当時の高分子科学の状況は高分子合成が中心であり、大学の授業でも重合反応に関する内容ばかりだった。一部工業分析の科目で高分子のNMRや熱分析の話が取り上げられていた。
1973年に「高分子物性と分子構造」という化学増刊シリーズの1冊が化学同人から発売されているが、著者が通学していた大学の教官であったにもかかわらず、不思議なことに授業ではその内容が反映されていなかった。
高分子のレオロジーに至っては、授業で2時間程度出てきただけである。化学系の学科でこのありさまなので当時の大学の授業で満足な高分子物性の授業が行われていなかったと思う。
しかし、高分子を製品として実用化するときには、高分子の合成に関する知識よりもレオロジーや物性に関する知識のほうが重要である。高分子合成の知識が不要というわけではなく、高分子合成の知識もレオロジーや物性から構築すべきで、大学の授業で行われていたような反応中心の知識は実務で役立たない。
指導社員の座学はそのように感じさせる十分な迫力があった。松岡先生の「高分子の緩和現象」という名著が1995年に発売されているが、そこでもレオロジーを学ぶのにバネとダッシュポットを忘れろ、とある。それを指導社員は、著書が発売される15年前の1979年に当方に教えてくださったのだ。
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