2019.02/12 ステージゲートによる研究開発
NHK朝ドラのマンペイさんはついに揚げ麺による即席ラーメンの製造法を見つけた。フクちゃんは、ようやく完成した、と喜んでいたら、マンペイさんはこれからだという。
研究開発のステップを御存じない方は、この場面をどのように感じられたのだろうか。実は、現代の多くの企業で行われているステージゲート法の研究開発では、ようやく企画が完成した段階なのだ(注1)。
番組を毎日見てこられた方は、その長い苦労を見て、昨日の場面がゴールに見えたのかもしれないが、まさにマンペイさんの言葉のように、これから研究開発を始められるようになったのだ。
ゴム会社のU取締役は、紙の企画書だけを持ってきた管理職に対し、まずモノを持ってこい、としかりつけていた。企画段階でまず具体的なモノまでできていることが研究開発を成功させる秘訣だともいわれていた。
まさにドラマはその言葉通りに進んでいるのだ。そして科学的裏付けを取るためにダネイホンでお世話になった大学教授に科学の視点で出来上がった技術について考察を求めている場面も紹介された。
ステージゲート法による研究開発では、企画が研究開発に移行する前にゲート段階で科学的視点から厳しい評価が下される。
しかし、企画に新しいシステムを盛り込むためには、マンペイさんがやられたような非科学的な試行錯誤も重要な技術手段だ。写真会社では試行錯誤で仕事をやるな、と言っていた役員がいたが、会社により試行錯誤を認めていないところもある。
しかし、試行錯誤により自然界から機能を見つけ出す作業は重要である。試行錯誤を否定するCTOのもとでは、誰でも気がつく当たり前の技術しか生まれない(注2)。即席ラーメンの様な世の中にない商品を生み出すためには、試行錯誤も重要な技術手段の一つだ。
余談だが、ラテン方格を用いるタグチメソッドは、試行錯誤法に他ならない。なぜなら、ラテン方格はすべての条件の一部実施を可能にするために考案された手法だ。
(注1)ゴム会社の高純度SiC事業では、フェノール樹脂とエチルシリケートの均一に混ざり合った前駆体が合成されただけでは、その企画がゴム会社で認められていない。企画が認められていなかったばかりか、世間でいうところの係長クラスの昇進試験で出された問題で「あなたが推進したい新規事業について述べてください」という問いに対し、その企画内容を書いても0点がつけられている。無機材質研究所に留学して6ケ月経過した時に人事部長からその結果を告げられ、傍らで聴かれていた所長が、その内容を1週間だけチャンスを与えるから実現してみたまえ、と言われたおかげで高純度SiCを生み出すことができた。前駆体を無機材質研究所の電気炉で焼成しただけなので、1週間で完成したわけだが、その1け月後には、社長から2億4千万円の先行投資を頂いている。このようにして生まれた企画が30年続く新事業になった。昨年10月にこの事業は名古屋の会社に移管されたが、事業移管先が名古屋の会社というのも不思議である。
(注2)だから科学的なのだ。論理的結果として導かれるモノは、科学がこれだけ普及した時代には、誰でも作り出せる状態にある。オープンイノベーションが叫ばれるようになった背景には、科学的に考えていては見いだせないような技術がどこかに転がっていないか、という期待感がある。本来はドラッカーが言い始めた言葉だが。
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