2019.02/27 経験知と暗黙知の重要性
20世紀には技術の世界で経験知や暗黙知がやや軽んじられていたように思う。形式知は重要だが、経験知や暗黙知も重要で、経験知を正しく伝承できるようメーカーはその仕組みを備えなければいけない。
PPSと6ナイロンの相溶は、形式知からは否定される現象だが、当方の暗黙知によれば発生しうる現象であった。また過去に経験知としてΧが正であっても相溶して透明になる現象を成功させた二つの経験知があった。
さらに、ゴム会社の新入社員研修で現場の職長から「押出成形は行ってこいの世界だ」という経験知を伝授されていた。すなわち、押出成形では、コンパウンドの完成度が低いと押出成形で狙った形状を付与することすらできなくなる、という。
これらの経験知や暗黙知から、PPSと6ナイロン、カーボンのポリマーブレンドの押出成形ではコンパウンドの完成度が低いことに着目し、パーコレーション転移の制御のためにはPPSと6ナイロンが相溶しなければいけない、とまで思っていた。
このような思いで中間転写ベルトの製造工程に立っていたので、音の変化に敏感に対応することができた。以上にのべた経験知や暗黙知が無かったなら、仮に音の変化に気がついたとしても、俊敏にDSC測定を行ったり、ベルトの廃材を集めさせる指示を出せなかったと思っている。
半年しかなかった開発時間において、形式知だけで対応していたら技術を成功させることはできなかった。また、カオス混合装置の発明はロール混練の経験知があったからこそ少ない実験で実用化可能な設備を完成させることができた。
退職直前に頂いたチャンス、高分子学会賞の審査会ではこのあたりを正直に述べて落選しているが、ポリマーフロンティアで講演できる機会を頂いた。またカオス混合装置については元神戸製鋼の技術者が自分の発明と称して講演されるぐらいの評価を頂いている。
ただし特許はコニカミノルタと、その別のバージョンが小平製作所から出願され登録されている。芸能界では物まねが出てくれば一流と言われているが、技術の世界でもパクリが現れれば一流である。しかも混練の世界では一流と言われている人にパクられたのだから技術者として本望であるが、偽物に騙されている人に同情する。
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