2019.03/30 剪断流動と伸長流動
高分子の混練は、混練機で発生するエネルギーを高分子が受け取り発生する剪断流動と伸長流動により進行する。
ここでよく知られた伸長粘度は剪断粘度の3倍と言う法則(Trouton則)があるが、実際の高分子の混練ではこの法則が成立しない。
その原因は伸長流動に弾性項も含まれるためだが、これはゴムひもを引っ張ってみれば簡単に体感できる。
ゴムひもは加硫されている高分子だから、それは違うだろう、などという細かいことは考えず、少し引っ張るだけでも伸長流動が単純に粘度だけでは説明がつかないことに気がつく。
この段階で、さらに細かい突っ込みを言いたくなる人は、この先を読んでいただく必要はない。
なぜなら科学の難しい話をするつもりはなく、現象をうまく捉えるコツをお話しするのが目的だから。
世の中にはいろいろな人がいる。教科書に書かれていることは絶対に正しくて、それに反したことをいう人を無知と決めつけるような人から、最初から教科書など信用せず、経験こそ命、といった職人肌の人までさまざまである。
これは、知識に対する認識の違いから来ていると当方は考えているが、ある現象に対峙したときにこの認識の違いが大きく影響するから技術開発において問題となる。
剪断流動と伸長流動について、前者の理解についてはそれほど認識の違いでばらつかないが、後者については弾性項の存在を意識するかどうかで混練で引き起こされる現象から機能を拾い上げる能力に差ができる。
すなわち、現代でも科学で十分に説明しきれていない分野について、過去の形式知の延長線上で現象をとらえようとする姿勢と、過去の形式知を批判的にとらえ、目の前の現象との比較に努力する姿勢では、発明や発見の機会に大きな差が出る。
手元のゴムを引っ張るという作業においてもそこに現れる現象に過去の形式知と異なる知を見出せるかどうかは、その作業に対する姿勢で決まる。
その姿勢に対して、過去の形式知を振り回して批判ばかりするような人には、遭遇した現象から新たな機能を拾い出せない。これについてはドラッカーも「頭の良い人ほど成果を出せない」とばっさり切り捨てている。
カテゴリー : 高分子
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