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2019.04/18 シリコーン

昨年台湾ITRIから講演依頼を受けてから、すでに3回シリコーンに関して講演を行った。ケイ素化合物の反応を初めて扱ったのは大学4年の時で、トリメチルシリルメチルグリニア試薬を合成し、ジケテンを開環する反応である。

 

グリニヤ試薬は極めて反応性が高いので-20℃以下に冷却してエーテル溶媒中で行う。少し危険な実験で、設備が整った実験室でなければ行えない反応である。大学院に進学後は、ケイ素ではなく3塩化リンを相手に合成実験を行ったが、こちらはやや反応がマイルドで室温で行えた。

 

さて、シリコーンを事業としている会社の大手は、何らかのケイ素源を持っている。例えばこの分野で日本最大の信越化学は、シリコーンウェハーもその事業の一つとしており、低コストでシリコーン類を製造可能なはずだが、シリコーン類は、他の高分子に比較し、高価である。

 

昔からシリコーンポリマーが高価格だったことは問題となっており、水ガラスから新たなシリコーンポリマーを合成する試みは古くからおこなわれてきた。40年ほど前、大阪工業試験場椎原先生は水ガラスからシリコーンポリマーの様なエラストマーを合成し、新聞発表され関係者を驚かせた。

 

しかし、その時の水ガラスエラストマーは、水を含んでいることで弾性体となっていたので、耐久性のないエラストマーだった。すなわち乾燥雰囲気化に長時間放置するとゲル化し、弾性を示さなくなった。しかしこの実験で多くの人が水ガラスの中のシロキサンがポリマーであることを十分理解することができた。

 

ゴム会社に入社後、この椎原先生の実験が気になって、水ガラスからケイ酸ポリマーを抽出する実験を行っている。THF-ジオキサン混合溶媒でケイ酸ポリマーを抽出したのだが、すばやく処理を行わないとゲルが沈殿し、扱いにくかった。

 

そこで、フェノール樹脂との複合化を行ったところ、電顕でシリカ粒子が観察されない有機無機ハイブリッドを製造することができた。ただ、Na不純物などが残っており、水ガラスを使用していては高純度化が難しい、と判断した。

 

そこでこの発明はTEOSとフェノール樹脂との反応に展開されてゆくのだが、今度はフェノール樹脂とTEOSとを均一に混合できない問題が生じた。ここから先はすでにこの欄で書いているので省略するが、いずれの話も特許出願されているが、現在の特許庁のデータベースでは、このころの特許を収録していないので調べることができない。

カテゴリー : 高分子

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