2019.04/22 「オーディオ」という趣味
「家を建てるなら」と題して、工務店社長が気を利かせて造ってくれたオーディオルームのおかげで当時流行していた「オーディオ」という趣味にハマった体験を連載で書いている。
当時、家電業界だけでなくオーディオの専業メーカーが雨後の竹の子のごとくオーディオ界に参入していた。家電業界は普及価格帯の製品に力を入れ、専業メーカーは金に糸目をつけず先端技術を取り入れた製品を市場に投入していた。学食でカレーライスが100円の時代に100万円台のスピーカーやアンプが登場している。
家電業界のオーディオへの取り組みの面白さは、そのブランドの名前にみることができる。例えば東芝電機は音の神様をイメージした「オーレックス」、これに三洋電機は、大阪のノリで音をそのままブランド名にした「オットー」、技術こそ命と家電開発をしていた日立は、低歪という性能から「ローディー」というブランド名をつけていた。松下電器は「パナソニック」、ソニーはそのままでテープデッキのデンスケは大ヒットした。
オーディオ専業メーカーは、今は無き、「サンスイ」、「アカイ」、「トリオ」、「ナカミチ」はじめ大小多数のメーカーが日本に誕生し、「ローテル」は早々とヨーロッパへ活動の拠点を移し、今やグローバル企業になって社長は外人である。
とにかく店頭でその音を聴く限り、価格に相関した良い音がしていた。当時カローラが100万円以下で購入できた時代に、1セットが車より高いオーディオセットについては感覚的に高すぎると誰もが思っただろう。
視聴しても高級品の半額程度の我が家のオーディオセットとの違いが判らなかった。当時の技術において音場感は重要なファクターであり、部屋の設計をどのように工夫したらよいのかというノウハウが重要と言われていた。すなわち、高級オーディオでも設計の悪い部屋ではその実力を十分に発揮しないことが知られていた。
そのため装置の使いこなしに関するオーディオ評論も盛んで、多数のオーディオ雑誌が誕生している。今は「stereo」はじめ3種類程度しかないが、当時書店の雑誌コーナーには多数の新刊が登場していた。
高度経済成長の波に乗り、オーディオと言う趣味も普及してゆくのだが、面白いのは音楽を聴くためだけでなく、良い音を再生できる機器をそろえることだけが目標の趣味人も登場したことである。
当方はレコード代の出費が膨らむとともにオーディオバブルに疲れて機器への興味が薄れていったが、最高の機器を目標とする人たちの中には、スピーカーやアンプを自作する人たちが現れた。
長岡鉄夫はその代表的スターで、死後教祖のように扱われている。その門徒は今も健在で音工房Zは自作が趣味の人たち向けにスピーカーのキット販売を行っている。先日土曜日は、そのミサの日のようでもあった。
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