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2019.05/23 ガラス転移(3)

大学院の二年間は、3-4カ月に1報書いているような学生生活だったから、一年に1報パターン化した論文を書いているガラスの研究者を不思議に思った。

 

結晶成長に時間がかかるから、というのが彼らの言い分だったが、それならば並行して実験を進めればよいと厳しいことを先輩の研究者に言っていた記憶がある。社会を知らない学生は純真で正直であり、それが人を傷つけたりする。小説の世界のような非常識な学生だったと反省をしている。

 

たまたま某無機製品の会社役員が、所属講座の教授の世話で学位をとる、という話が聞こえてきた。びっくりしたのは、一年後にその役員が論文を7報発表し学位としてまとめたことだ。論文の共著者は主査の教授が末席を占めており、各論文には5名以上名前が書かれていた。

 

およそ一人でできる様な研究内容に3名以上の部下を動員して論文を書いていたその役員の神経に疑問を持った。会社を明らかに私物化している。論文の内容も、大半がガラスからの結晶成長を論じた研究で、DSCと電子顕微鏡写真がデータである。研究の形式にはなっているが、およそ役に立たない内容だった。

 

もっとも企業として価値のない内容だからすぐに公開できた、と言えるのだが、捏造とは異なった視点でこれも問題だと思っている。大学ならば多少は許されるかもしれないが、企業ならば会社の金を学位のためだけに使っているようなものだ。

 

当方は学位のもとになった研究はすべて自分で行い、さらにその内容は実用化された仕事から論文を書いており、学位審査料も自分で払っているので、会社への恩義は研究内容を公開することを許可してくれたことぐらいだ。論文をまとめるための時間を労働時間から割いていない。

 

それでも心から、多くの人のサポートがあり学位をとることができました、と答えている。しかし、この役員は、退職前に頑張って学位を取ることができたのでうれしい、ドクターコースに進まず社会に出る諸君も企業で頑張って学位を取ってください、と、講座で開かれたお祝いの酒席で学生たちを激励していた。

カテゴリー : 高分子

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