2019.06/17 AIの普及で考えなければいけないこと(2)
AIが企業の研究開発に導入されたらどうなるか。その事例は30年ほど前のゴム会社の研究所の出来事と同じことが起きる。
当時ウィンズローとかいう人が発明した電気粘性流体がゴム会社で研究されていた。常温超伝導体やスタップ細胞と同じくキワモノ的発明だが、電場のONとOFFで物質のレオロジー特性を制御できるということでゴム会社は飛びついた。
おそらく当時最先端の研究レベルではなかったろうか。すでに防振ゴムや車の足回りの部品について実用に近いものができており、自動車会社との共同研究もスタートしていた。
ただ大きな問題は、二つあり、一つはゴムケースと組み合わせて用いるとゴムから配合剤が電気粘性流体(ERF)に溶出してきてドロドロとなり使えなくなるERFの耐久性問題と、電気粘性流体に使用していた粉末の品質ばらつきが大きかったことだ。
この二つの問題を解決したために当方は会社を辞めることになったが、その遠因は、聞くところによるとERFの耐久性問題を工学博士も含む優秀な人材が一年かけて「界面活性剤では絶対に解決できない」という結論を出したことによる。
この結論をもとにERFと組み合わせても配合剤が抜け出さないゴム、それは配合剤が添加されていないゴムを開発することだ、と工学博士を含む優秀なスタッフたちにより企画され、樹脂補強ゴムをたった3ケ月で開発できた当方ならばそれができるはずだと、なったらしい。
評価されたことはうれしかったが、配合剤が全く入っていない高分子など実用性の無いことは経験知から明らかだった。ただ形式知でその証明はできないだろう。実はAIが研究開発部門に導入されたらこのようなおかしなことが日常として起きるようになる懸念がある。
カテゴリー : 一般
pagetop