2019.07/14 高分子のプロセシング(18)
無機材料では、形式知に裏打ちされた結晶構造で物性や機能の議論を進めることができたが、高分子では非晶質構造がその機能に影響しているという大きな問題がある。
また、高分子の中には、結晶化しやすい材料や結晶化の速度が遅いか結晶化しない高分子などがあり、同定する時の手掛かりとなる成形体に含まれる結晶の状態さえも多様である。
結晶化しやすい高分子については、材料の構造を階層的にとらえることが可能であるが、無機材料の結晶構造より複雑である。
高分子鎖が結晶を構築する場合には、分子鎖間のパッキングあるいは高分子鎖の一部が規則正しく凝集することにより、主に六つの結晶単位格子が形成される。
すなわち、正方晶と六方晶、三方晶、斜方晶、単斜晶、三斜晶の単位格子であるが、例えば紐のイメージに近いポリエチレン(PE)の場合、炭素数が70以上となる分子鎖は、その一部分で平面ジグザグ構造をとり、斜方晶からなる結晶構造をとる。
ところが、高分子鎖は長いのでそのヒモのような構造を折りたたみながらラメラと呼ばれる構造まで結晶成長してゆく。
高分子鎖が折りたたまれて結晶化するこのような現象は、PEに限らずナイロンなどの合成高分子やセルロース、ポリペプチドなどの天然高分子にも見られる普遍的な現象である。
ラメラ晶は、非晶質構造を挟みながら成長してゆき長周期構造を作り球晶構造まで成長する。
カテゴリー : 高分子
pagetop