2019.07/20 モンスター部下
日経ビジネス版にモンスター部下が原因で管理職が鬱になった話が紹介されていた。そして、現在は上司によるパワハラではなく部下オリエンテッドの時代で管理職がストレスにさらされている実態を解説していた。
上司と部下の関係で最も記憶に残っているのは、入社2年目の時の管理職である。この欄ですでに書いているが、当時先端技術のホスファゼン変性ポリウレタン発泡体の工場実験を成功させた結果、新入社員である当方に始末書(注)を命じた管理職である。
この2年後には、年末に行う上司と部下のコミュニケーションシートに部下全員がこの課を出たい、と書いていたことをこの管理職は当方に相談されている。すなわち、全員に書かせた犯人は誰だ、という犯人探しの相談である。
この上司によると、この課を出たいと書いていなかったのは当方だけだと褒めてくれた。当方は、もうすぐ留学しますから同じことです、とそっけない回答をして、打ち合わせ後に当方は上司を喜ばせる気の利いた回答ができなかったことをあとで反省していた。
とにかくこの管理職は部長まで昇進されているが、部下から見ると子供のようなずるがしこいところがあっただけでなく、責任感の欠如した人だった。それでも部長まで昇進したので皆がやさしい会社だと噂していたのが記憶に残っている。
このころの記憶を頼りに日経ビジネス版を読んでみると、上司と部下とのコミュニケーション不足が見えてくる。
組織管理職は相手が嫌がったとしても一日1回はあいさつ程度でも部下全員に声掛けしなければいけない。1分程度でもすべての人と雑談ができれば合格である。それができないような人を組織管理職にしてはいけない。
当時、だめな管理職と部下から見えていてもその管理職の上司からは評価されて部長まで昇進しているのだ。どこか高く評価されていたところがあったのだろう。だれでも部長まで昇進できるような甘い会社ではなかった。
この管理職と部下との日常は、ひそひそ話の対話がほぼ毎日のようになされていた。そして当方はいつも声がでかい、と叱られていた。大きな声で話せないようなコミュニケーションでもマネジメントに役立っていたのだ。
ひそひそ話の共有化がなされた結果、メンバーの団結力は高まってゆき、仕事でお互い助け合い、2年間難燃性ポリウレタンフォームやフェノール樹脂天井材などのアウトプットがでていた。管理職はともかく、経営から見たら決して悪い組織ではなかった。そして皆が自然と団結してコミュニケーションシートに「この課を出たい」と偶然書いたのだ。
(注)市販されていないホスファゼンを工場実験に使った、ということで後工程の部門に管理職が叱られたらしい。詳細な経緯は知らないが、女性の指導社員が課長から当方に書かせるように、ときつく伝え聞いた話が記憶に残っている。樹脂補強ゴムを3カ月で仕上げたところ、指導社員が交代し、天使のような指導社員になったと思っていたら半年後に始末書である。当方はモンスター社員ではなかったので天使のような美しい指導社員に命じられるまま、始末書を書くことにしたが、その始末書でホウ酸エステル変性ウレタンフォームの企画を提案している。新入社員テーマ報告会では、樹脂補強ゴムのテーマとホスファゼン変性ポリウレタン、ホウ酸エステル変性ポリウレタンの3テーマを報告するのかと思っていたらこの始末書に書いた企画だけを新入社員報告会で報告している。天使のような美しい指導社員は当方の気持ちを理解されており、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの話題も一枚だけプレの話題に挿入することを許してくれた。今から思えば一年間に3テーマこなしたことになる。天使のような指導社員はこの時のテーマの学会発表にも管理職にうまく許可を取ってくれたので、入社二年目と三年目で日本化学会でこの時のテーマを小出しに報告している。その後高分子の難燃化セミナーの講師として招聘されるきっかけとなったが、フェノールフォーム天井材の上市まで高分子の難燃化研究を2年半担当することになった。その後無機材質研究所へ留学、高純度SiCの開発と事業化を9年近く担当することになった。始末書は良い思い出となっている。おそらくこの時の2.5年間はサラリーマン生活で最も幸せなときだったのかもしれない。部下の評判は悪かった管理職だがマネジメントができていたのかもしれない。マネジメントとは人を成して成果を出させることであり、ひそひそ話の内容は決して良くは無かったが、結果はマネジメントになっていた。
カテゴリー : 一般
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