2019.09/04 高分子のプロセシング(40)
SP値のところで指摘したが、モノマーの性質だけから混合状態を判断するのは危険である。実際にSP値が既知の溶媒に高分子を溶解してみて判断するのがよい。また、経験知として分子間相互作用を期待できるならば混ざる、と安易に考えない方が良い。
例えば、障子のノリとして使われるポリビニルアルコールに水素結合をしそうな他の高分子を混ぜて均一なポリマーアロイを製造しよう、と考えると失敗する。
ポリビニルアルコール同士の強固な水素結合を壊してまでも他の高分子が混ざろうとしないからである。これは、PVAを用いた障子のノリで容易に確認できる。水で希釈することは可能だが、ご飯粒を分散しようとしても、うまく分散してゆかない。昔は、障子を張り替えている途中でノリが少なくなると飯粒を混ぜてその場を乗り切ることができたが、PVAのノリでは、きれいに飯粒が分散しない。
すなわち、異なる高分子同士を混ぜ高機能な材料を創り出すことは基本的に難しいことだと思っておいた方が安全である。何も考えず試しにやってみよう、と混練してみてもよい実験結果の得られない確率が高い。
異なる高分子同士をブレンドする必要があるときには、コンセプトに基づく材料設計とそこから新しい現象を汲み取る努力あるいは意気込み、気合のような、形式知とはなじめない要素が重要になってくる。
混練は技術のカテゴリーだが、温故知新とか不易流行といった故人の精神に馴染んでおく習慣も、形式知だけでは対応できない混練分野で開発に成功するためには大切なことである。
K(勘)K(経験)D(度胸)を否定しないが、勘が閃いたなら温故知新を実践すると混練分野では技術開発に成功する確率が高くなる。勘や度胸が無くても温故知新は誰でも理解できる。
すなわち、高分子のブレンドについて文献情報が多く公開されているので、それを利用するとよい。過去の情報活用は誰にでもできる成功確率が高い取り組み方法である。
カテゴリー : 高分子
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