2019.09/09 「考える」ということ
目の前に問題がある時に、その問題の解決策を考えようとするが、ドラッカーはその姿勢に問題があると指摘している。
必ずしも目の前に見えている問題が、正しい問題とは限らないからだ。そこで、まず正しい問題を考えることから開始せよ、とドラッカーは教えてくれる。
このドラッカーの教えは、科学でいえば、目の前の問題に対して仮説を立案せよ、に相当するのかと言えば、全く違うのだ。
まず、問題そのものを探せと言っている。これが慣れないと結構難しい。また、解が一つ出ている場合には、もうだめだ。
その解が唯一という呪縛から逃れられないだけでなく、その解が他の問題の解でもあることに気がつかない。それは研究開発シーンで部下を指導した時にも実感している。
例えば、ゼラチンの改質にコアシェルラテックスを使用するアイデアがライバル会社から特許として多数出願されていた。
ゼラチンの脆さを改善するために、シリカゾルとラテックスとを併用するのだが、シリカゾルへラテックスを添加した時にシリカゾルの凝集が生じる問題があった。この問題を解決するためにコアシェルラテックス技術が生まれている。
確かにシリカゾルをラテックスで包んでしまえば、シリカゾルの凝集は絶対に起きない。これは、シリカゾルが凝集するという問題を考えた回答である。
ただし、この回答には一つ欠点があり、ラテックスでシリカゾルを包んだ結果、シリカの補強効果が少し落ちるのだ。すなわちシリカゾルを多めに添加する必要があった。
そもそもシリカゾルとラテックスが別々に添加されるプロセスが問題として捉えると、すこし対策が変わってくる。すなわち最初から、シリカゾルとラテックスが共存したコロイドをゼラチンの改質に使えばよいことになる。
この問題を提案した時に、ゼラチンとシリカゾルラテックス共存コロイドとを混ぜたときに、シリカゾルの凝集が起きるかもしれないから、やはりコアシェルラテックスの方が良い、という意見が多数出てきた。
シリカゾルの凝集問題ばかり考えているから、コアシェルラテックスが、シリカゾルとラテックスを別々に添加している問題を解決した一つの答え、という視点がなかなかできない。
すなわち、コアシェルラテックスという解がシリカゾルの凝集問題ではなく、プロセス問題を解いた解という見方がなかなかできず、コアシェルラテックスから離れられない。
新たな視点で問題をとらえなおすことは、科学の仮説設定よりも難しいのか、といえばそうではない。慣れれば簡単である。ただし、慣れるまでにはあるコツが必要だ。弊社の研究開発必勝法ではそのコツを公開している。
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