2019.09/14 高分子のプロセシング(43)
相溶(miscibility)とは、分子レベルの混ざりやすさを意味するときに用いる。
一方、サンズイ偏が無い相容(compatibility)とは、種類の異なる物質がうまく調和し、機能を発揮している時に用いる言葉である。
また、二成分のポリマーアロイを製造するときに相容化剤(compatibilizerまたはcompatibility accelerator)が用いられるが、なぜか相溶化剤という表記を時折見かける。
混和剤のほうが日本語として適しているとの指摘もあるが、あまり用いられていない。
Flory-Huggins理論で説明したが、二成分の異なる高分子をブレンドした時に相溶する条件は、χ=0またはχ<0となる、非常に特殊な組み合わせの時だけである。
一般的なχ>0の組み合わせでは、海島構造の相分離となる。
今、高分子Aと高分子Bとを重量比1:1でブレンドしたコンパウンドの断面写真があったとする。
この時、高分子Aを海として(マトリックス)高分子Bが島となった大きなドメインが観察されるはずだ。
この時、高分子Bの添加量を減らしてゆくとこのドメインサイズは小さくなってゆく。
非相溶系ポリマーブレンドでは、このように相分離してできる構造が大きくなるため、力学的物性が低下した事例が多い。
ここで、SP値を揃えて合成された2種類のアクリル系ラテックスをブレンドしてからPETフィルムに塗布し、その後熱処理した薄膜について、その断面写真を想像してほしい。
ラテックスの成膜では、熱処理を行っているにも関わらず、ラテックス粒子の形状と混合状態がそのまま観察される。
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