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2020.01/16 花王のパソコン革命(2)

プロジェクトでは、表題の本を参考に研究所内の試薬や材料のデータベースを作成しパソコンで管理しようということになった。

 

頭のいい管理職ならば、この時点でパソコンの一台でも必要になると気がつくはずだが、当方の上司は公私混同に無頓着だったので、すぐに当方の私物のパソコンでまずプロトタイプを作ってみようと言い出した。

 

以前上司に独身寮でMZ80Kを動かし、日々の業務の統計計算で使用している話をしたことを後悔した。

 

データベースのプロトタイプを作るならばフロッピーが必要になり、新たに購入しなければいけない。MZ80Kに付属していたテープメディアではランダムアクセスができない。

 

上司に相談したら、買えばいいじゃない、と簡単に言われた。しかし、会社は金を出さないという(注)。

 

当時20万円以上したフロッピー一式を月給が手取り10万円の従業員に、上司が会社業務のために購入を勧めるという異常な事態となった。

 

この流れに、メンバーの一人から意見が出たが、ならば成果を君たちどのように出すのか、という上司の質問に皆黙ってしまった。これは、今ならば暗黙のパワハラである。

 

しかたなく、シャープのFDOSも含め40万円弱をローンを組み購入することになった。そして日々の担当業務を終了後、寮でデータベースのプログラムを作るのが日課となった。

 

それだけではない。プロトタイプができたならデータベースを作るところまで命じられた。さすがにその時点でプロジェクトのメンバーから、会社で1セット購入すべきだと強い意見が出された。

 

それは、寝不足の小生を気遣ってくれた、指導社員だった。この指導社員と二人で会社で購入するパソコンの機種選定を任されたのだが、それがまた大変な騒動になった。

 

(注)今となっては笑い話となるが、当時OHPで特殊なPETフィルムが使われていた。これが高価だったので、研究部長からPETフィルムを元巻1本を購入し、それから切り出して使えという指示が出た。1980年代すでにペーパーレスを目指し、研究部門の会議ではOHPが必需品となっており、OHPシートの消費は多くなっていた。ゆえにこの研究部長の指示はうまくゆけばよいアイデアとなったが、OHPシートには十分な帯電防止処理がなされていることを研究部長はご存知なかったようだ。まずA4サイズにPETフィルムを切り出すのに手間取った。次にコピー機でそれを使用すると、5枚に1枚うまくコピーできるような状態で歩留まりが悪かった。しかし、それでもOHPシートより安い、ということで研究部長在職中続けられた。冷静に考えれば、切り出しからコピーにかかる時間を考慮すると人件費が寄与するので大幅なコストアップになっていた。高度経済成長の中、自動車関連産業では笑えないコストダウンや効率化もあったようだ。今ニュースでは、パワハラにセクハラ、職場のストレスで自殺など大きく報じられている。当時を思い出すと、現在の組織におけるストレスは十分に軽減されていると思っている。例えば、今の労働環境を基準に当時の状況を表現すると上司の権威は高く奴隷のごとく従業員が働くことを強いられた、と表現すると若い人に理解していただけるのではないか?一応当時でも労働基準法などは守られていることになっていた。しかし、今を基準に考えると、当時はかなり劣悪な労働環境だった、と言わざるを得ない。組織の中における公私混同もそれほど問題視されていなかった。しかし、高度経済成長の時代で我慢して勤務すれば給与が上がってゆく時代だった。また大卒であれば皆課長まで昇進できる、と言われていた。ただ、皆課長に昇進できたので、当方の上司の様な管理職も誕生していた。大学出ても課長になれない人がいる、と嘆きが聞こえてくるが、誰もが昇進できる状態でも嘆きは生まれたのである。

カテゴリー : 一般

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