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2020.03/08 研究開発管理(2)

ゴム会社で勤務した12年間に、Y取締役とU取締役、I取締役の3人による研究開発マネジメントを体験している。

 

Y取締役とI取締役は典型的な研究者であり、U取締役は技術職ではあったが、実務肌の濃い経営者だった。3人とも中途入社であり、Y取締役はBR01と呼ばれる合成ゴムで成果を出され、U取締役はFRP水槽はじめ建材部門の事業で、I取締役はラムダと呼ばれる新幹線の騒音を音響工学で低減する防音壁の成果を出されていた。

 

いずれの研究開発本部長とも直接お話しする機会や食事をする機会があった。Y本部長の時代に、SiCの研究で世界的に有名だった無機材質研究所へ留学している。しかし、Y本部長はSiCとは無関係の専門分野である米国留学を希望されていたので、留学中に受験した会社の昇進試験で当方はそのしっぺ返しを受けた。

 

ところが、昇進試験に落ちた結果、無機材質研究所で1週間という短期間であるが高純度SiCの企画を実現できるチャンスを頂けて、当方は成果を出している。これは後に30年続く事業となるが、「あなたが実現したい新事業は何か」という昇進試験の問いに対する解答の一部に書いたこの発明に対してY本部長は冷ややかだった。

 

その後留学中にY本部長からU本部長に代わり、U本部長からすぐに会社へ戻るよう打診があったので3年間の予定だった留学を1年半で切り上げ、復職して高純度SiCのパイロットプラント建設を行っている。

 

気分よく復職できたのは、2度目の昇進試験で1度目の昇進試験と問題が異なっていても同じ答案を提出して満点を頂き昇進できたからである。この出来事でY本部長と人物の違いをすぐに理解できた。

 

Y本部長の時代にファインセラミックス分野へ進出する社長方針が出されても何ら研究所方針を変更しないばかりか、社長方針に従い提出した企画に対しても応答が無かった。ところがU本部長は、生まれたばかりの高純度SiCの技術について、事業化のためにいろいろと丁寧にご指導してくださった。

 

Y本部長からU本部長に代わり当方の周辺にはA新規事業部長はじめ多くの偉い方が上司となり、たった1g程度の高純度粉末ができただけにもかかわらず、手厚いサポート体制が作られていった。

 

(注)新入社員研修中、夜のアルコールの場で研究所の経営上の問題について人事部担当者からいろいろと伺っていた。そこへ配属された当方が見た研究所の姿は、アカデミアよりもアカデミックな環境だった。もし研究所を企業の組織の一部とするなら、その運営は社長方針に従うべきだろう。もし、研究所を社長方針から独立した運営としたいならば、別会社にすべきである。しかし、人事部から説明を受けていた研究所の位置づけは、あくまでも社長方針に従うべき組織体であり、社長方針は社内のTVで直接全社員に伝えられていた。当方の留学中に定年前のY本部長がU本部長へ交代となっているが、これは妥当な人事だったのだろう。しかし、研究所の風土は、トップの交代でもすぐには変わらない。やがて研究開発本部における研究部門は縮小されていくが、風土はそのまま残った。アカデミック並みの研究を理想とする研究者が企業の経営を理解する、ということは難しい問題なのかもしれない。当方のFDにいたずらをした人物は、経営を理解していないばかりか仕事のやり方においても悪事を働いているとの感覚が無い優秀な研究者だった。

カテゴリー : 一般

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