2020.07/26 ファブレス
アイバニーズというギターブランドは、名古屋に本社がある星野楽器のブランドである。昔星野楽器はドラムセットTAMAが有名で、1970年代のフォークグループの多くはTAMAのドラムセットを使っていた。
アイバニーズはギターブームの時に星野楽器がスペインのギター工房から購入したブランドである。海外で知名度を増し、今ではエレキギターのブランドの一つとしてアリアプロ2よりも上になった。
アリアプロ2は、1980年代にレスポールモデルを基に演奏性を高めたオリジナルギターを発売し、made in Japan の力を世界に知らしめたブランドだ。
アリアギターも星野楽器もファブレス企業として知られた名古屋の老舗である。かつては、日本のギター工房だけに製造を委託してきたが、今は韓国や中国、最近はインドネシアの工房に製造を依頼している。
日本製は20万円以上の価格がつけられているが、外国製は高くても15万円程度である。しかし驚くのはその品質だ。
以前ギブソンES335のひどい品質の話をこの欄で紹介している。店じまい直前の楽器店で新品19万円で購入した商品なので、値段相応と言ってしまえばそれまでだが、そのひどい品質のギターが16万円で買い取りされたのには驚いた。腐ってもタイである。
今回アイバニーズの外国製で最高ランクの型落ち品新品をネットで見つけ、交渉の末8万円で購入できたのだが、ES335よりも品質が月とすっぽんと表現しても良いくらいに優れていた。
サウンドの美しさについては昨日少し書いたが、ノイズも個性となるエレキギターの世界では、その品質を比較しにくい。しかし、外観については組み立て品質の比較が可能である。
fホールから内部を覗くと、美しい材木の造形が観察され、接着剤の滲みなど見られない。fホールの木口はセルでバインディングされ、触ってもES335のように木くずが指に刺さることはない。
ナットの加工も弦の太さに合わせて丁寧に削られている。驚くのはメープルの杢目の美しさだ。これはES335も美しいと思ったが、それを凌ぎ、人工的にデザインされたかのようである。
心配になってデジカメにマクロレンズをつけて撮影し、100倍程度に拡大してみたが、ドットは現れず、正真正銘、天然杢目だった。
中国製だったが、その組み立て品質は日本製と変わらない。おそらく星野楽器が品質管理を厳しくしているのだろう。
修理中の1974年に購入した松岡良治工房のアコースティックギターの胴の中を調べてみたが、ES335同様のはみ出した接着剤や、小口の汚い力木を見つけた。
手工ギターと謳われた当時の高級品でさえ、見えない細部の品質は良くないのに、今回購入したアイバニーズのギターは、内部のセンターに用いられた材木まで美しかった。
それでもES335の売却価格の半額である。腐ったタイとヘシコとの比較になりそうな話だが、ブランドよりも品質の時代だろう。
カテゴリー : 一般
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