2020.08/17 コンセプト(10)
粒子の凝集体でできたドメインの分散状態について、パーコレーション転移が考えられる。ドメイン内部も同様にパーコレーション転移が起きていたほうが抵抗が安定する。
すなわち、凝集体のパーコレーション転移を制御して、その制御された凝集体の分散についてもパーコレーションを制御するというと難しそうに見えるが、混練の教科書には簡単にできそうに書いてある。
だから間違っているのである。分配混合を行えばそれができる、と言ってもそれは教科書の中での出来事であって、実際の現象を制御しようとなると、知恵が必要になる。
方法は2つある。6ナイロン相に全てのカーボンを分散し、6ナイロン相の中でパーコレーション転移を完結させておく。そうすればカーボン量に応じて、10の6乗から10の4乗までの体積固有抵抗の半導体相を形成できる。
そしてこれをPPSに分散するのが一つの方法で、これは最初に6ナイロンとカーボンを混練し、それをPPSと混練するという分割プロセスで簡単に実現できる。
もう一つの方法は、PPSに6ナイロン相を相溶させて、そこにカーボンを分散すると、6ナイロン相がスピノーダル分解を起こし、相分離するときに、PPS相で安定に分散しないカーボンは、6ナイロンに引きずられて凝集粒子相を形成する。
これは、かなりの難易度というよりも科学で否定される禁じ手である。ただ、高分子の世界では、科学で解明されていない現象が多いという理由で、このアイデアを積極的に考えると、新技術を生み出せる可能性がある。
ただこのようなチャレンジが許される風土であるかどうかが問題となるが、幸運なことに写真会社が合併したカメラ会社の風土は、それが許される風土だった。
最もこの無謀なPPS中間転写ベルトの押出成形技術はそのような風土だったから6年も続いていたテーマだった。
カテゴリー : 高分子
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