2020.08/29 企画を成功させるために(4)
企画書の書き方なる指南書は昔からサラリーマンの必読書となっているが、企画を成功させるために書かれた、よい指南書を見たことが無い。
モノが最初に必要と書いてある本が皆無である、というのがその理由である。その次に重要なのは、関係者の根回しとなるが、これについては2-3冊の指南書に書かれたノウハウを読んだことがある。それらに共通して書かれていたことは、企画書よりも大切だ、という点である。
そしてある一冊には、自分の目指す方向に相手のベクトルを向けさせるためには、その反対方向が地獄であることを理解させればよいと書いてあった。当方はこれを「怖い怖い戦術」としてセミナーでは説明している。
当方は、根回しについて、戦略と戦術が極めて重要だと思っている。中間転写ベルトでは、自社内で完結せず、他社からコンパウンドを購入する体制でプロジェクトが進められていた。
この時他社をどのように位置づけるのかは、戦略上重要である。他社のベクトルを合わせることができたときとできなかった時の両方を考えなければいけない。
すなわち、ここでは他社にイノベーションを起こすような技術開発をどのように進めてもらうのかが重要となってくる。この交渉に成功すれば、交代して半年間、前任者が言っていたように、部長の席に座っているだけで良い。
だから、単身赴任して最初に行った仕事は、コンパウンドメーカーとの打ち合わせであり、部下の課長から紹介していただく形で会議がはじまるよう段取りを決めていた。
しかし、結果から判断すると挨拶だけすればよかったのだが、そこで方針変更の話を持ち出した。これは事前に部下と打ち合わせた段取りであり、その時の手順として間違いではなかったが、予想外にも相手を怒らせてしまったのだ。
確かに自信をもって開発してきたのだから、あと残り半年のところで方針変更と言われたら、カチンとくる技術者もいるかもしれない。
しかし、当方は立場としてお客である。部下とも相手の反発を少し予想していたが、両者の関係から黙って従ってもらえる、という予測だった。
「素人は黙っとれ」という言葉が飛び出した瞬間に、課長が機転を利かせて、残りの打ち合わせはお忙しいでしょうから部屋に戻っていてください、とおさめてくれた。
当方はすぐさまセンター長のところへ飛んで行き、この仕事、半年後には失敗します、私と一緒に責任を取ってください、とお願いした。
センター長は、「***万円でなんとかなるか」と言ってくださったので、当方はコンパウンドメーカーから万が一断られた時のために準備していた戦略をセンター長にご説明した。
センター長は、定年を2年後に控えており、中間転写ベルトが製品として軌道に乗った姿を見て退職することを夢見ていたようだ。そんな気持ちは決裁権の満額である「****万円」という言葉で伝わってきた。
このようなときに迅速に決断できないような上司ならば大変である。赴任先の組織に素晴らしい上司がおられたことに感謝した。あとはこの金額で仕事を成功させるだけである。
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