2020.10/01 スピノーダル分解(2)
昨日の続きになるが、水と油のように混ざり合わないものを混ぜようとしてもなかなかうまくゆかず、2相に分離するが、100℃ぐらいまで温度を上げてやると、油が少なければ油滴となって水の中に分散する様子を観察することができる。
すなわち、温度という因子は、それが高くなると物質が混ざり合うようにするような感覚に思えてくる。
温度が上がると水の分子運動が高くなるので、と説明すると教科書的になるが、混合のエントロピーの効果は、肉の煮込み料理を作ってみれば、教科書を読むよりも容易に理解できる。
男子厨房に入るべからず、は頭の固い昔の爺の考え方だが、男も料理をすべきである。率先して料理を行えばこのような物理現象を何度も観察できる機会に恵まれる。女性だけにそのような機会を独占させておくのはもったいない。
サラダドレッシングでも肉の煮込み料理でも100℃から室温まで冷却してくると、細かい油滴は連結して大きくなって相分離が明確になってくる。
この時油が少ないならば、大きな油滴が何粒もできるような状態になるが、水と油が同じような体積であると、水と油の二相に分離する。
少し難しい表現をすると、界面エネルギーが粗大化を支配する相分離では、このような体積割合の違いで共連結構造になったり粒子状構造になったりする。
もし、混ざり合わない(χが0でない時)AとB2種の高分子を無理やり分子レベルで均一に混ぜたとする。
A分子とB分子の接触した界面エネルギを下げるよう(混ざり合わないAとBが一緒にいるのは居心地が悪いはずである)に、すなわち界面を少なくするように力が生まれそうだ、と気がつくはずだ。
相分離が始まると、AとBの割合が変化、すなわち濃度変動を起こす。やがて許容できる、お互いに許しあえる濃度範囲で安定になる。しかし、最も安定なのは、A相あるいはB相単独であるはず(χが0とならないので)で、最終的にはA相だけあるいはB相だけになる。
このような相分解様式をスピノーダル分解と呼ぶ。高分子の相分離で見つかっているのは、多くがスピノーダル分解でありその他の粘弾性相分離などよくわからない相分離形式もあるが少ない。
当方が驚いたのは、PPSと6ナイロンは一般の混練機で混練する限りは、少ない成分が島となる海島相分離するが、カオス混合を行うとこれが相溶し、急冷しても5年以上室温で相分離せず安定であったことだ。
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