2020.10/16 材料技術の難しさ
金属やセラミックスなどの無機材料開発では、結晶の理解が重要で同時に相図を理解していなければ、日々の開発業務で成果のレベルを上げることが難しい。
ところが高分子材料については、無機材料と異なり、「これ」を理解していなければ、という形式知の分野は無いのかもしれない。
ゴム会社で高純度SiCの事業を立ち上げ、無機材料の開発が技術者としてのキャリアとなったが、志半ばで写真会社に転職し、高分子材料技術者としての道を歩き始めた。
そして歩きながら感じたのは、無機材料開発と比較した時の難易度の高さだ。これは専門外だから難しいと感じたわけではない。
無機材料開発では、ある程度お決まりの手順が存在し、とりあえず獲得する必要のある形式知を身に着けておけば、現象の理解ができる。
しかし、高分子材料開発は、無機材料開発と少し勝手が異なる。お決まりの手順が無いのだ。これをお決まりの手順で開発を進めているといつしか新しい材料開発ができなくなる。
例えばゴムの配合開発では、お決まりの手順があるように見える。新入社員の3か月間、レオロジーの神様のような指導社員のご指導を受けたのだが、お決まりの手順とそうでない方法を指導された。
指導社員はお決まりの手順を説明しながら、この方法で新しい技術ができる、と言っている間は一人前ではない、と指導してくれた。そして現象観察に基づく臨機応変の開発ができなければ、新材料の創出は難しい、と。
無機材料技術者よりも高分子材料技術者としてのキャリアが長くなり、高分子材料技術者としてカオス混合技術を開発できた。
そしてつくづく思うのは、高分子材料技術者として一人前になるためには、かなり広範囲の「知」の蓄積が必要だということである。
pagetop