活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2020.11/07 コンセプトの重要性

化学は、ピラミッドが作られた時代から存在していたので科学よりもその歴史ははるかに長い。ゆえに化学全体の知を眺めてみると形式知以外に経験知が数多く存在する。

 

例えば、ポリマーアロイを学ぶのに必要なフローリー・ハギンズ理論というものは、経験知と呼んでよいようなものだ。その経験知の上に形式知が構築されているおかしな世界である。

 

そこに気が付いた当方は、立体構造に着目し、錠と鍵の関係のような相溶状態を想像し、バルキーな側鎖基をもったポリオレフィンとポリスチレンとを相溶させてみた。

 

たまたまレンズ材料の開発を担当できたので実験をしたのだが、見事に相溶し透明なポリマーアロイができてびっくりした。期待はしていたがうまく行き過ぎとも思った。

 

フローリー・ハギンズとは異なるコンセプトで高分子の相溶という現象を眺めてみた結果であるが、これがうまくいったことで、ゴム会社の指導社員に出されていた宿題を思い出した。

 

指導社員はカオス混合を使えばどのような高分子でも紐状であれば相溶するのではないか、というコンセプトを持っていた。

 

そして、ロール混練でSP値が異なる高分子を混ぜて、ロール上で透明になっている様子を見せてくれた。そして連続プロセスでこれができる発明をするのが当方の宿題だと冗談を言っていた。

 

この冗談を実験する機会が、中間転写ベルトの開発を担当した時、コンパウンドメーカーの技術者が当方のカオス混合のアイデアをバカにしたために生まれた。

 

コンパウンドメーカーが採用してくれなかったので、自分でカオス混合の生産プラントを立ち上げたのだが、明確なコンセプトのおかげで、たった3か月でPPSと6ナイロンが相溶して透明な樹脂液が出てくる現象を観ることができた。

 

カテゴリー : 一般

pagetop