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2020.12/13 アイデアの出し方(4)

他の例である。中間転写ベルトの試作では、6ナイロンとカーボンが添加されたPPSを押出成形していた。

 

試作現場では金属音が鳴り響いていた。これはPPSの結晶化速度が早いためであり、押し出された成形体である無端ベルトがたわむときに音が出ていた。

 

すなわち、試作現場における金属音という現象は、結晶化したPPSの発する音だと形式知から想像がつく。これが真実かどうかは、熱分析するなり、X線散乱実験を行えば判定可能である。

 

試作が終わったとたんに金属音から低周波音に変化した現象は、当方以外誰もが聴いていた音である。ここでカオス混合のアイデアが生まれるかどうかは、形式知と経験知、暗黙知の量で決まる。

 

少なくとも高分子の形式知のある人ならば、この現象を不思議に感じるはずだ。しかし、当方が初めて聴いたこの音から誰もカオス混合のアイデアだけでなく不思議な現象という見解が出されていなかった。

 

Aさんに話したら、「当たり前やないか、早く押し出しているときは、いつもあんな音になる」と経験知だけで答えていた。この人は高分子に関する形式知が0の人だとすぐに判断できた。

 

高分子材料を扱っている技術者にはAさんのように経験知だけで考察をされる方がいる。確かに高分子材料に関する形式知には怪しい理論もあるが、とりあえずは形式知として整理して身に着けておくべきである。

 

当方は、身に着けていた形式知とゴム会社に入社した年に出会った混練の神様と呼んでも良いような指導社員から指導された経験知と「カオス混合」という幻の暗黙知について伝授されていたので、この音の変化からカオス混合技術を生み出すことができた。

 

ゴム会社に入社し、指導社員に出会ってカオス混合を設計する宿題を頂いてから30年近く経っていた。

 

高純度SiCの開発を推進していた時には忘れていた宿題であったが、フィルム開発を担当してコロイドの攪拌の難しさに気がついて思い出した。

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