2021.01/13 考える(1)
昔大学入試問題10傑の一人、小林秀雄著「考えるヒント」を読んだ時に、考え込んでしまった。小林秀雄氏の文章は難解な文章である。
しかし、どこかの対談でご本人自身自分の書いたものを後から読んで訳が分からなかった、と話されていたのを読み、びっくりして考え悩むことを放棄した。
ここでは、そのような難解なヒントを書くつもりはない。しかし、技術者が、現象を見て考えるときには、そこに潜んでいる機能を見出すように現象をよく眺めることだ、と書いても分からない人には訳が分からないだろうと思う。
まず、この点について、当方が心がけていることを書いてみる。考えるためには、「考える」ための対象となる問題なりテーマが必要になる。
そもそも考える事が下手な人は、自分で問題なりテーマを考案したりするのがやはり下手である。
これは、「考える」ということが下手とは、どのようなことかを意味している。頭が悪い、というところに原因を持っていきたくなるところだが、頭が良くても、すなわち、問題さえ与えればパブロフの犬の如く条件反射的に答えをいうことができるぐらい頭の良い人が、問題を考えだす事ができないケースも見てきた。
40年近く、特にゴム会社でそうした頭の良い人を観察した結果、「考える」ことが下手な人の共通点を見つけることができた。それは評論家的であり、自分の責任をいつも意識していない人たちだった。
すなわち、現象を前にしても自分がそこから機能を取り出さなくても誰かが見つけ出したものを奪い取ればよい、ぐらいの気持ちでいる人がいる。実際に当方は何度もアイデアを奪われた経験がある。
まず、自分が考えなければ誰が考えるのか、という責任感を持たなければいけない。これが最初の一歩である。自分で考えてわからない場合には、誰かに頭を下げてでも問題なりテーマを考え出す覚悟なり、謙虚さと責任感が無ければ、問題なりテーマを考え出すことができない。
カテゴリー : 一般
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