2021.02/13 高分子の難燃化技術を考える(9)
1960年代、高分子の熱分解に関して研究が進みLOI法が発表された。1970年にはスガ試験機(株)で酸素指数燃焼性試験機が開発されている。
高分子の難燃性について1970年代にはかなり研究が進み、日本でも火災時に発生するガスに着目した建築関係の独自規格が登場している。そして、1980年代に縮合リン酸エステル系難燃剤の発展と臭素系難燃剤の上市が活発に行われた。
コーンカロリーメーターは1983年に米国で開発され、1993年にはこの測定装置に関する国際会議がつくばで開催されている。
高分子の難燃性評価装置に関する発展史から、全自動酸素指数測定装置の開発がニーズに対応して行われたものであることが伝わるだろうか。
但し測定対象サンプルとして燃焼速度の速い発泡体は考慮されていなかったので、ゴム会社の研究所において購入後、使えずに放置する事態になったのだ。
当方は、この全自動酸素指数測定装置の自動化機構の理解に努め、燃焼速度に制御が追いつけない問題をただ解決するだけで使い物になることを突き止めた。
しかし、改造のためには費用が発生する。課長は金を使わずに改良するように命じてきた。金をかけず一番手っ取り早い方法は、マニュアル測定だった。
ところが機械はマニュアル測定に対応していなかったので、制御系の電源を外し、一部ギアも外して、マニュアル制御できるようにして、その手順をアルゴリズムで書いた。
何か成果を出せ、という宿題に対しては、発泡体を熱プレスして密度を上げ、全自動酸素指数測定装置でLOIを自動測定し、発泡体のLOIについてはマニュアルで測定し、その両者の相関を求めた。
この研究結果から、相関係数がほぼ1となり、誤差分析の結果、発泡体のLOIが最大で0.5程度、熱プレスで高密度化したサンプルよりも低くなる、という成果が得られた。
発泡体密度によっては弾性率が低いためにサンプルが自立できない場合もあったので、専用のホルダーを手作りした。お金がないのでタイヤ試作室の職人にお願いし、ステンレスの端材をもらい、加工道具も借りて仕上げた芸術品である。
研究報告書とともにこのホルダーも課長に説明したところ、社内の品質発表会に推薦してくれて、そこで賞を頂くことができた。しかし、全自動酸素指数測定装置をただマニュアル測定できるように改造しただけなので、この受賞は心苦しかった。
マニュアルの測定手順をアルゴリズムで書いたので、おそらく課長はマニュアルであることに気がつかなかった可能性がある。ただし、アルゴリズムには目視とか手動と言う言葉が随所に登場していたが。
改善提案の審査員は、自動装置を手動測定に変えるという逆転の発想が素晴らしい、と褒めてくださったが、なぜか皮肉に聞こえた。研究部門から唯一推薦された発表がこの程度だったので、審査員もコメントに困ったのかもしれない。
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