2021.03/08 ハイブリッド車に見る技術
日産自動車のハイブリッド車には、トヨタやホンダと同じカテゴリーのハイブリッド車以外にe-Powerと呼ばれる日産独自のハイブリッド車がある。
ご存知のように、ハイブリッド車はトヨタのプリウスが先鞭をきり、ホンダが続いて登場させて、老人と子供の比較CMが話題になったりした。
この両者のハイブリッド形式については、1980年代にコンセプトの発表がモーターショーでなされている。
すなわち、単純にエンジンを回転させて電池を充電し、その充電された電池からエネルギーを取り出しモーターを回す方式では、熱力学の観点からエネルギー効率が下がることが自明なので、高速ではエンジンを使い、低速ではモーターを使うというハイブリッド車のコンセプトが生まれている。
そして20世紀末にトヨタはプリウスを21世紀に間に合いました、と気合十分に新発売しており、当時カローラに次ぐ売り上げを達成している。
すなわち科学の成果としてプリウスが生まれたわけだが、ハイブリッド車開発の過程で、自動車の走行時に発生する無駄なエネルギーを回収する技術が進歩した結果、20世紀には科学の視点から効率が悪いと判断された方法が技術により科学の成果と遜色のない形で実現された。
日産自動車のe-Powerは、20世紀に熱力学すなわち科学の形式知から効率が悪いと否定された仕組みだったが、開発された種々の技術を組み合わせることにより、科学の成果と遜色のないシステムを生み出した。
そして、その生み出したシステムに潜んでいた長所の機能を導き出して開発したのが、熱効率50%のレシプロエンジンである。
このハイブリッド車の開発の歴史を見ると、科学と技術とが異なるシステムを生み出す場合があることを学ぶことができる。
また、科学で明らかになっていない現象から、技術開発の結果「科学的には不明だが」優れた機能が見出されることを知る。
科学だけが未来を約束するのではなく、科学的ではない部分をも包含した、人間の営みとしての技術開発があって、未来は明るくなるのである。
日産自動車が「技術のニッサン」といいながらトヨタに負けているのは、科学と技術の優劣さではなく、周知のように経営の問題であることを注記しておく。トヨタと日産がシェアーを競っていたような時代を生きている間にもう一度見てみたい。
カテゴリー : 一般
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